「どんど焼き」とは小正月に行われる火祭りの行事です。全国で1月~2月に行われますがその呼び方は地域によってさまざまで「三九郎」「左義長」「どんと焼き」「道祖神祭」などがあります(道祖神って何?という方は専門家にインタビューしたスキマ記事をご覧ください)。
どんど焼きの目的は集落の人々の1年間の災いを払い、豊作や商売繁盛、家内安全、無病息災、子孫繁栄を願うこと。お正月に飾った門松やしめ飾りなどの縁起物を燃やす風習があります。
この記事では子どもの頃からどんど焼き(筆者の地元では三九郎)に参加し続けてきた筆者が、三九郎の意味やその由来、さまざまな呼び方、どんど焼きの立て方、どんど焼きの食べ物、参加する際の注意事項などを解説していきます。
どんど焼きとは
どんど焼きとは「お正月の間飾っていた松飾りや注連(しめなわ)飾り・書初めなどを、神社の境内や広場、畑に持ち寄ってお焚き上げする(燃やす)行事のこと」です。
集落の人々の1年間の災いを払い、豊作や商売繁盛、家内安全、無病息災、子孫繁栄を願う伝統行事です。お正月に門松やしめ飾りで出迎えた神様を、燃やす炎とともに見送るという「送り火」の性格ももっています。
どんど焼きはいつ開催される?
どんど焼きは小正月(1月15日)頃に行われる行事です。旧暦では1月15日は新年最初の満月の日なので、満月と火の力で1年間の災いを払います。
地域によっては節分の時期に行われるところもあります。最近は1月15日が平日だと開催が難しいため、お正月が明けて少し落ち着いた土日に開催する地域も多くあります。
どんど焼きの意味・由来とは
どんど焼きの由来は諸説あります。主な説は次の通りです。
- どんどん燃える様子から
- 燃やし始めに青竹がはぜて「どんっ」と音がするから
- 火を燃やすとき「尊と(とうと)尊と(とうと)」とはやし立てたのがなまり、どんど焼きとなった
近畿北陸周辺では「左義長」と呼ばれていますが、これがどんど焼きの由来ともいわれています。左義長とはもともと平安時代の宮中行事で、1月15日の夜に正月飾りや御札などを焚き上げる行事でした。これが民間にも広く伝わり、いまのどんど焼きに至ったという説もあります。
どんど焼きの呼び方は地域によって違う
どんど焼きは地域によって呼び方が異なります。長野県や山梨県は道祖神が多いので、これらと絡めて道祖神祭と呼ばれてきた地域もあります。道祖神についてはこちらの記事「宝さがしのようなワクワク感!『信濃路の双体道祖神』著者が8,000基の道祖神を45年間撮り続けたワケ」をご覧ください。
- 近畿北陸周辺:「左義長」
- 東北:「どんと焼き」
- 関西:「とんど焼き」
- 長野県・山梨県:「道祖神祭」
- 長野県松本市周辺:「三九郎」
- 九州:「鬼火たき」
- 静岡県:「さいと焼き」
- 沖縄」「ドンド焼き」
筆者の実家がある長野県池田町では「三九郎」といいます。由来は「道祖神祭を統括する神主 福間三九郎の名前にちなんだ」「凶作・重税・疫病の3つの苦労=三九郎を払うため」など諸説ありますが、正しいところはわかりません。
どんど焼きの作り方
初めて見たとき「どんど焼きの櫓は、どうやって立てるんだろう?」と思った人も多いはず。どんど焼きの担い手が少なくなった地域に移住し、立てる手伝いをしないといけなくなった人もいるでしょう。そこでここではどんど焼きの立て方を解説します。
- 事前に骨組みとなる木の棒もしくは竹を森から伐採する(筆者の地区では竹林を持っている住民の土地から年越し前に切り出してきていました)。
- どんど焼きで燃やす門松やしめ縄、正月飾り、前年のお守り、お札、熊手などを各戸から集める(育成会や子ども会の役割になっている地域も多い)
- 骨組みとなる棒の先端近くをひもで縛り下を広げて円錐型に組む(この際、木の先には大きなだるまを指した状態で立てる)
- 燃えやすい木の板などで汲んだ骨組みの中にキャンプファイヤーのように木を組む
- 隙間に木の板や枝、しめ飾り、習字など燃やすものをどんどん詰める
- 2~4が崩れないように外側をひもで固定する(強く何周か巻く。詰めるものの量によっては4と逆でも可)
- 残っただるまやしめ飾りを付ける
- どんど焼き完成!
どんど焼きではお餅やまゆ玉などを食べる
どんど焼きでは、燃える火が落ち着いてきたらいろんなものを焼いて食べるという風習があります。筆者の地元では、お餅、まゆ玉、お団子、お酒・豚汁・ちょっとしたお菓子の振る舞いがありました。
どんど焼きで焼くお餅は鏡割りしたお餅がいいといわれています。理由は鏡開きのとき、どんど焼きの煙に乗って神様が田んぼや山に帰るので、神様にお供えしたお餅を、この行事で焼いて食べればご利益があるからです。
まゆ玉とは柳などの枝に繭形にまるめた餅・団子などをたくさんつけた小正月の飾り物であり食べ物です。中部地方から関東、東北にみられ、もともとは養蚕の安全を祈って小正月に飾られていました。
正月の時期にスーパーマーケットに行くと、まゆ玉用の枝が売られているところもあります。カラフルなまゆ玉は子どもに人気で簡単に家庭でつくれるので、ぜひどんど焼きに参加する際は作ってみてください。
なぜどんど焼きは今日も続いているのか
伝統行事であるどんど焼きですが、今日まで続いている地域は多くあります。何かを祈るという本来の機能は薄くなってきていますが、今日でもつづく理由の1つは「地域内のつながり形成の場」であることです。
自治会や地域コミュニティの弱体化が叫ばれる今日において、地域住民が一堂に会し”特に何もせず”に一緒に火を見て食事をするどんど焼きは、地域住民のつながりを形成する機能をもっています。非日常的にみえるどんど焼きですが、それは日常の災害や非常時に備える地域コミュニティと帰属意識を再構築する機能をもっているのです。
どんど焼きに参加する人へのアドバイス-気を付けるべきは服装-
どんど焼きは大量の木や松を畑で燃やす行事です。うっかりお気に入りの服で参加した日にはあとで公開することに… 参加する際は次のことに気を付けましょう!
- 煙の臭いがついても火の粉が飛んできて少し穴が開いてもいい服装で参加する
- 長靴など濡れても汚れてもいい靴で参加する(火で畑がべちゃべちゃになるから)
- 餅やまゆ玉を焼くときに火に近づくので、手袋は必須
- 地域ごとに独自ルールがあったりする
どんど焼きは風に乗って煙や火の粉が周辺の民家にも飛んでいきます。開催地の近くに家がある人は、外に洗濯物を干したままにしたり、家の窓を開けたままにしないようにしましょう。
最後に-観光客参加可の大規模などんど焼きもある-
どんど焼きは年に1度の行事ですが、大規模に開催している地域では観光客も参加できるところもあります。大きな規模のものはとても迫力があるので、自分が住む地域以外の観光化されたどんど焼きに足を運ぶのもおすすめです。Skima信州では他にも伝統行事に関する記事を多数掲載しているので、ぜひそちらも読んでみてください!
参考資料
・ウェザーニュース, 2020, 「15日は「どんど焼き」 不思議な名前の由来とは?」.
・「たのしくまなべる神社のページ お宮キッズ」
・房総ファミリア新聞.
・勝山左義長 どんど焼き、しめ飾りについて.
・じゃらんニュース, 「どんど焼きとは?左義長と同じ?いつの行事なのか意味や由来など地域の差も解説」