悠々と流れる千曲川を真ん中に広がるまち、長野県東御市(とうみし)。
歴史や文化、自然、食などの魅力を伝えるため、「話つくせない旅、東御市」というパンフレットが2023年4月に発行されました。ナビゲーターは、東御市ふるさとPR大使を務める俳優の丸山智己さん。
パンフレットのなかで丸山さんが紹介していたモノゴト、人を参考に、東御市内を巡るリフレッシュの旅に出かけます。
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首都圏から約2時間!ほどよい田舎、東御市とは?
長野県の東側、上田市と軽井沢町の間に位置する東御市。難読地名として取り上げられることも多い「東御」という名前は、合併した小県郡東部町と北佐久郡北御牧村の漢字をひとつずつ取って付けられました。
市の北側には、今なお活火山として煙を上げる浅間山。南側には八ヶ岳や蓼科山がきれいに見え、面積の半分以上は山林、4分の1は田畑と、多くの緑が残っています。栽培されているのは、国内生産量1位の信濃クルミのほかにブドウやお米、ワインやクラフトビールなど、美味しいお酒も多くあります。
都心からアクセスが良いのが魅力で、公共交通は北陸新幹線としなの鉄道を乗り継いで最短約1時間40分。市内に上信越自動車道の「東部湯の丸インターチェンジ」があり、高速バスや車でアクセスできる気軽さも嬉しいところです。
標高2,000mの「湯の丸高原」でハイキング
リフレッシュといえば、まずは自然。最寄り駅からタクシーで30分ほどの「湯の丸高原」は、国の天然記念物に指定されたレンゲツツジの群生をはじめ、高山植物や花々の宝庫です。
初夏から秋にかけては、湯の丸高原を知り尽くしたネイチャーマイスターと散策を楽しむ、「ガイド付きトレッキングツアー」がおすすめ。1時間半程度の気軽なハイキングから、4時間ほどかけて周囲の山々を巡るトレッキングまで、1人でもグループでも申し込めます。
湯ノ丸山の山頂からは浅間山や白根火山、2時間半ほどのコースで巡るお隣の篭ノ登山(かごのとやま)からは、北アルプスの山々から八ヶ岳、南アルプス、遠く日光の山々や富士山まで、360度の大パノラマが広がるのだとか。
道の途中には、高山植物の女王と呼ばれるコマクサやアヤメの群生、ノアザミやリンドウなど花々と、そこに集まる高山蝶。オコジョやニホンカモシカといった野生動物も暮らしているといい、「こんな身近にそんな貴重な場所が・・!」と、驚きを隠せませんでした。
東御のお酒の新拠点!湯楽里館ワイン&ビアミュージアム
ブドウ畑に囲まれた丘の上にある日帰り温泉施設「湯楽里館(ゆらりかん)」。その2階にあるのが、地元のお酒を学んだり、試飲したりできる「ワイン&ビアミュージアム」です。
ここは、東御市に増えている小規模ワイナリーの情報をまとめて見られる展示エリア。2023年6月時点でワイナリーの数は13ヶ所、ワインブドウを栽培するヴィンヤードは12ヶ所を越え、それぞれ個性あるワインが誕生しているそう。長野県が掲げるワインバレー構想のひとつ、千曲川ワインバレーの中核市としてワイン文化を牽引している様子がうかがえます。
試飲エリアでは、東御ワインを中心に8種類のワインが3週間ごとに入れ替わりで用意されています。この日は、オリンピックを通じて東御市と縁ができたというモルドバのワインもありました。ワインコンシェルジュとおしゃべりをしながら、少量から試せるので、お気に入りの味を探すのにもピッタリ。
人気のクラフトビールOH!LA!HOビールの飲み比べは、樽から注がれるオンタップで、華やかな香りと深い味が堪能できます。
東御市の自然の恵みがたっぷり「里山のくらし商店」
お昼ご飯は、ヨーロッパ風の可愛らしい佇まいが目印の「里山のくらし商店」。
「東御市にたくさんある渋柿の実を活用したい」という思いから始まった柿酢づくりをきっかけに、ハチミツや野草、ハーブなど、里山の恵みを生かして楽しむショップとカフェ、工房、直売所、ガーデンなどがあります。
カフェを担当しているのは、東御市の野菜や豆、乾物などをふんだんに使った「麓花table(ロカテーブル)」さん。ランチメニューは「今週のおやさいランチ(1100円)」と「季節のカレープレート(1100円)」、他に柿酢を使ったドリンクやハーブティ、焼き菓子など、心も身体もホッとやすらぐメニューが揃います。
野菜中心ながら、ボリューム満点でお腹いっぱい。つい長居したくなるような、時間がゆっくり流れる場所でした。
アートに触れる梅野記念絵画館・ふれあい館
浅間山の麓から千曲川を渡った反対側、東御市出身の造形家の作品などが点在する「芸術むら公園」。シンボリックな明神池のほとりに建つのが、絵画美術館「梅野記念絵画館・ふれあい館」です。
展示されているのは、28歳でこの世を去った天才画家「青木繁」の作品を中心に、郷土画家や埋没作家たちの、繊細ながら力強い作品。「東御市にゆかりのあるわけではない青木繁の作品が、なぜ・・」と思われるかもしれませんが、初代館長・梅野隆氏がここに美術館の建築を決めたのは、ロビーから見える雄大な浅間山がきっかけだったそうです。
青木繁は、20歳のときに仲間と信州に写生旅行へ訪れていて、そこで東御市を代表する画家・丸山晩霞(まるやまばんか)や小諸義塾の島崎藤村(しまざきとうそん)の美術論・人生論に触れ、いくつかのスケッチを残しています。ここで作品を見たあとは、東御市文化会館に併設されている「丸山晩霞記念館」にも、足を運んでみるのも良いかもしれません。
絶景広がる八重原温泉「アートヴィレッジ明神館」
長野県といえば、各地に湧き出る温泉が魅力のひとつ。梅野記念絵画館と同じ芸術むら公園内にある「アートヴィレッジ明神館」は、露天風呂から見える田園風景と浅間山の開放的なロケーションが抜群の温泉施設です。
かすかに塩気を感じるお湯は、無色透明で掛け流しの天然温泉。ナトリウム成分が含まれていて体を芯からあたため、凝りも疲れもスッと溶けていくようなやさしい温泉です。
施設内に売店やレストランがあるほか、周辺には、ギャラリーと本、衣類を扱う「問(とう)」や、天然酵母パンやおやきが食べられる「まる屋」など、こだわりのカフェも。
日常からちょっと離れて、自分のために時間を使えるような、リフレッシュできる環境が揃っています。
歴史あるまち並みに馴染むガラス工房、橙(だいだい)
北国街道「海野宿」は、江戸時代の旅籠屋造りの建物と、明治時代以降に造られた蚕室がある建物の両方が残る宿。古き良き家並みを生かした宿泊施設や飲食店が増えはじめていて、今なお注目のエリアです。
1999年にオープンした「ガラス工房 橙(だいだい)」は、その名の通りガラス作品を作る工房に、ギャラリーショップとカフェが併設された店。長屋門をリノベーションした建物は、橙色の暖簾が目印です。
色とりどりの器や小物が並ぶ店内。ここで注目したいのが、東御市のクルミの殻を使って生まれたオリジナルの「くるみガラス」です。「ガラスという素材で、東御に馴染む作品を作りたい」という、店主の寺西将樹さんの思いが詰まった作品は、ほんのり緑のレトロな雰囲気。
2階にあるカフェでは、これらのガラスの器を実際に使い、試すことができます。 メニューは旬の果物や地元食材を使ったスイーツとドリンクが中心。
この日のケーキは、ブルーベリーやイチゴがたっぷり乗った甘酸っぱいベリーベリーチョコケーキ(500円)。自家製の梅ジャムジュース(600円)の爽やかな酸っぱさと併せて、夏の初めにたっぷりの元気をチャージしました。
ローカルへの入り口、ゲストハウス「おみやど」
築100年を越す古民家に泊まる「おみやど」は、1日2組限定で、宿主が在中しているタイプのゲストハウス。田舎のおばあちゃん家みたいな、トトロの世界のような、どこか懐かしいレトロな空間が広がります。
宿主は、農家でありつつ東御市の定住アドバイザーも兼務する宮下広将(みやしたひろゆき)さん。ご自身も神奈川県からの移住者で、宿泊に訪れる人は、地方のリアルを知りたいという人も多いそう。
日当たりの良い縁側で、宿のニワトリと戯れながら話すのは、仕事や暮らし、これからのこと。ゲストハウスならではの、宿主や地域の人との交流が生まれる瞬間に、心安らぐひと時でした。
ご当地グルメもおみやげも揃う「道の駅 雷電くるみの里」
旅の締めくくりはやっぱりお土産。ということで、最後に足を運んだのは、浅間サンライン(県道79号)沿いにある「道の駅 雷電くるみの里」。駅長さん曰くこの場所は、関東圏から車で2時間半、石川県までもおよそ2時間半と、ちょうど観光の真ん中に位置しているのだそう。
東御市出身の江戸時代の名力士「雷電為右衛門(らいでんためえもん)」にちなんだ駅の名前がついていて、雷電に関する展示や商品があちこちに見られます。いただいたのは、雷電の草履をモチーフにしたというご当地グルメ「わらじ焼き(340円)」。手のひらサイズの五平餅のようなお餅が2つ入っています。
東御産のもち米とうるち米を使ったもちもちの生地に、同じく東御産のクルミを使った甘辛のタレが香ばしくべストマッチ。朝8時のオープンから午前中に売り切れてしまうこともあるというので、早めのチェックがおすすめです。
クルミを使ったお土産は全部で25種類ほどあり、一番人気は道の駅限定のくるみタルト。次いでゆべしやお饅頭など、好みや用途に合わせて選ぶ楽しみも味わいました。
首都圏からおよそ2時間でアクセスできる東御市には、この場所だけの豊かな自然や美味しいもの、そして温かな人たちとの交流がありました。もうひとつの故郷のように、穏やかな空気が流れるまちで、ホッと一息、小休憩の小旅行に出掛けてみるのはどうでしょう。
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