8月15日、お盆真っ只中の信州では多くのイベントが開催されます。
中でも有名なのが、諏訪の花火大会。日本三大花火大会にも数えられ、毎年全国から約50万人もの見物客が訪れ諏訪を賑わせます。
その他にも木崎湖の灯籠流しや信州新町のろうかく湖での灯籠流しと花火大会などもあり、お祭り好きな県民はどのお祭りに行こうか迷う日となるでしょう。
今年、その日に私が訪れたのは安曇野市の穂高神社。
ここでは毎年8月15日に、戦没者の慰霊のために「みたままつり」が行われます。
今は平和でのどかな風景が広がる穂高地域でも、太平洋戦争末期の昭和20年5月19日には2カ所で米軍機の爆撃があり、穂高有明で少なくとも農作業中の2人が死亡したという記録も残っています。
今回私は、祭りの最後に奉納される手筒花火の撮影に挑みました。
静岡県は遠州の三ケ日手筒花火保存会が毎年この祭りのために、穂高神社へ赴いて素晴らしい手筒花火の奉納を見せてくれるのです。私は去年初めてこの祭りで手筒花火を生で見て感銘を受け、来年も必ず見に来ようと決めていたのでした。
雨の静寂の中、花火を待つ
当日の会場は雨に見舞われ、僕が神社に着いた頃には人の声より雨音の方が多く聞こえているような状況でした。私も三脚をセットし終わったら、傘を差して座り込んで待っていました。
会場は神社の広い駐車場で、花火が行われる場所はロープで囲われています。花火と観客との距離は20mほどの距離があるため、安全な環境で鑑賞出来ます。
手筒花火が行われる前の時間は神社の方で鎮魂のための神事が行われているようで、荘厳な雰囲気が神社の方から伝わってきました。
雨は降り続いていましたが花火の開始10分前には小さな賑わいを見せ始め、100人以上は見物客が集まっていたと思います。去年も雨が降りながらも開催されたので、毎年来られる地元の方々は迷わず来られたのでしょう。
雨にも負けない 大迫力の手筒花火
時刻は予定の8時30分を少し過ぎた頃。ついにアナウンスがかかり、花火の奉納が始まります。
手作りの手筒に火を点す「点火」
筒の先に点火されます。「シュー」という音を立てながら筒から火花が吹き出してきます。
慎重かつ豪快に「筒起こし」
やがて火の勢いが増し、「ゴォー」という音になっていきます。
それとともに奉納者は横を向いていた筒を起こし、火の出る筒の口を上に向けます。
筒を起こしつつ、周囲に豪快に火の粉が振りまかれます。
高く上がる圧巻の火柱 「放揚」
筒が上を向き、噴水のように火の粉が吹き上がります。
奉納者はこの後に迫るハネ(発破)に備え腰を落とし、構えます。
この間奉納者は、筒から放出され上から降り注ぐ火の粉を頭から浴び続けます。
なんとも勇ましく迫力のある姿です。
圧巻のラストを飾る爆発「ハネ」
手筒花火の一番の見所は、なんと言っても最後の爆発です。
身体を揺らすような衝撃とともに伝わる「ドォン!」という大きな爆発音。
音や衝撃の迫力以上に、奉納者の気迫、男気も感じさせられます。
筒を直接持った奉納者はどれほどの音・衝撃を感じるのでしょうか…
点火からハネまでわずか数十秒の世界ですが、火柱を見ている間はそれ以上に長い時間であったかのように感じます。
手筒花火は短時間の中に、まさに「序破急」を感じさせます。
数十秒の中で様々な表情を見せてくれる手筒花火
1本の手筒花火はだいたい40秒前後で終わってしまいますが、その中でも多様な表情を見ることが出来ます。
奉納者が火の粉を振りまく様子。望遠レンズならではの表現で切り取ってみました。
こちらは片手で持てるサイズの手筒花火。一見可愛いサイズ感にも見えますが・・・
こちらも最後は豪快にハネます。
手筒花火の魅力の半分は奉納者にあると言っても過言では無いでしょう。
花火の光で闇に浮かび上がる職人らしい姿が魅力的です。
横に向けていた筒を起こした瞬間。ダイナミックな火の粉のアーチが描かれます。
奉納者と比べて立ち昇る火柱がどれほど大きいかもお分かりいただけるでしょうか?
花火はこのように数本同時に点火されます。何本もの火柱が目の前に上がる様は、圧巻の光景です。
是非一度見て欲しい、手筒花火
ダイナミックに空を彩る打ち上げ花火も良いですが、大迫力の火柱と音と衝撃を近くで味わえる手筒花火もなかなか味わい深い物です。
混雑する諏訪の花火よりも落ち着いて楽しめ、スムーズに帰れる点でもオススメだったりします。
次の8月15日は、平和への祈りとともに穂高神社で手筒花火の鑑賞はいかがでしょうか?