「御神渡り」の原理を徹底図解!伝説の裏に隠された諏訪湖の奇跡

 

こんにちは。関東地方に住んでいてもハートは晴れ時々信州、おざわっぷる(@naganozawapple)です。

我が地元の誇り、諏訪湖では冬に「御神渡り(おみわたり)」と呼ばれる氷の筋が出現することがあります。世界的にも珍しい絶景で、深い歴史の舞台でもありますが、それだけではありません。ここでは御神渡りを「自然現象」として科学の目で見ていきます。

御神渡りが出現するメカニズムは複雑ですが、そもそも諏訪湖は「湖が凍る」ための地理的・地形的条件をいくつも兼ね添えています。570年以上続く観測記録が「気候変動のデータ」として着目され、“omiwatari”が世界的な科学誌に掲載されたエピソードもご紹介いたします。

たっぷり科学の記事ですが、苦手な方は…図だけでもご覧いただければ嬉しいです。僕自身が理解するためにも、御神渡りのメカニズムの図解に手書きで挑戦してみました。

尚、この記事では諏訪湖以外に出現するものについても「御神渡り」と表記させていただきます。「神が渡る」という諏訪大社の伝説が由来ですが、諏訪湖以外でも現象名として一般化ている、という認識でいます。ご承知おきください。

御神渡り=氷の山脈

真冬に諏訪湖が全面結氷し、最低気温が-10℃前後の日が続くと、氷の収縮と膨張が繰り返されて亀裂が生じ「御神渡り」が出現すると言われています。まるで山脈のように連なる氷のせり上がりは、高さが30cm~180cmほどになります。(諏訪市博物館ウェブサイト参照)

2018年2月 撮影:じょー様(@t_joe_san)

それでは、冬の諏訪湖で一体何が起こっているのか、少し詳しく見ていきましょう。

【図解】出現の仕組み:氷は温度で動く

御神渡りが出現するメカニズムは実に複雑で、完全な解明にはまだ至っていないと言われています。

とは言え、大まかにはわかっています。ここでは「よく紹介されているメカニズム」「科学的事実」に基づいて「細かすぎない細かさ」「筆者の脳内イメージ」「図解」させていただきます。おざわっぷるのヘンテコ手書きイラストをご笑納ください。

おさかなの吹き出しは、諏訪湖のミジンコです。縮尺おかしい。

ある冬の日。吐く息が白くなるほど寒くても、気温が0℃以下にならないと湖は凍りません。

実際は、一度に湖面全体は凍りません。少しずつ、少しずつ。

気温が0℃になると、やがて水も0℃になって凍り始めます。このとき、水は氷になると体積が少しふくらみます。これちょっと大事です。

実際には、こんなに氷の近くにおさかなはあまりいません。

気温が氷点下になりました。氷点下=凍る温度よりも下。文字通り氷は解けません。氷の下にある水は熱を奪われる一方なので、氷は厚くなっていきます。

ちょこっと補足。「冷たい水は下にたまるはずだから底からも凍るのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そうは行かないのがまた科学の面白さ。ほとんどの場合、温度が低い方が水は「重くなる」ため、下の方へ行きます。しかし、水が一番「重くなる」のは約4℃の時です。つまり、4℃~0℃の時は「冷たい水の方が軽い」状態になるので、0℃の水は一番上に来ます。このため、水が凍っていくのは上からのみとなります。

天気はずっと「快晴」の設定です。曇・雪・雨は難敵。

夜中には最低気温が-10℃付近まで下がるくらいに寒くなりました。氷は順調に厚くなります。しかしそれだけでなく、氷は温度が下がるとわずかずつ体積が縮んでいきます。縮むということは、引っ張り合うということ。これ結構大事です。

背景は実際の景色をもとにしていますが、フィクションです。

明け方、気温が上がると氷も温度を上げます。先ほどとは逆に、氷は温度が上がるとわずかずつ体積がふくらんでいきます。ふくらむということは、押し合うということ。これもかなり大事です。

凍った湖のそばを歩くと、どこからともなく「ピキーン!」「キュウィィーン!」というような不思議な音が鳴り響いてくることがあります。これは氷同士が押し合って小さく小さく割れている音なのです。小さすぎて見えない上に、何より音がどこから聞こえてくるのか本当にわからなくてプチパニックになります。この不思議体験、おすすめアトラクションです(笑)

諏訪湖の魚と言えばワカサギですが、このおさかなは架空です。

さて、気温が-10℃付近まで下がる日が続き、④⑤が繰り返されると、ある時氷に亀裂が出来ます。温度が下がって氷が縮み、引っ張られて裂かれるということです。これが言わば「御神渡りのもと」になります。

ヒビのように小さな隙間には、水が入り込んでいきます。氷に接した0℃の水は、たちまち凍ります。

都合により、ミジンコは枠外に飛び出しています。

先ほどご説明した通り、水は凍るとふくらみます。狭いところに入った水は、凍るとまわりを押し広げます。野菜を冷凍庫に入れると細胞壁が破壊されて元には戻りません。小学生の頃、帰宅したら家の水道管が破裂していた時には衝撃でした。これらはあくまで例ですが、「水→氷」のパワーは結構恐ろしいのです。この現象が氷の小さな亀裂の中で起こります。

このようにして、微細ながらもダメージを受けながら氷が大きくなり、また縮み、亀裂ができ、また大きくなり…と、④~⑦を繰り返していくうちに、ある明け方、その時がやって来ます。

※画像はイメージです

ふくらみたい、広がりたいけど広がれない、力を逃がす場所がなく限界まで達した氷は、自ら割れることによってエネルギーを発散します。この時、張り詰められていた氷が割れ、グワッと横から挟まれるように押し上げられて氷の山脈が出現します。これが「御神渡り」と呼ばれているものです。

この時の轟音たるや、すごいようですね。昔は諏訪盆地一帯に響き渡ったと聞きます。静かな夜明け前に、遠くから「ごぉぉぉぉぉーーーっ」と音が鳴り響いて聞こえ、それはそれは神々しかったと、懐かしそうに語る人もいます。

そして、⑧も含めて繰り返されると、氷の山脈はさらに成長していきます。その後、気温や天候の変化を受け少しずつ姿を変え、次第に小さくなっていきます。

参考までに、2018年2月1日~23日に同地点で撮影された御神渡りの様子を、撮影日が早い順に並べました。

2018年2月 撮影:しおこー様(@Salt_Island_)
2018年2月 撮影:おーむら様(@shinsyulove)
2018年2月 撮影:じょー様(@t_joe_san)
2018年2月 撮影:筆者

以上が、御神渡りが出来る大まかなメカニズム(と筆者が考えているもの)です。なにしろ100%解明はされていない自然現象なので、今後もっと詳細にわかるかもしれません。そもそも、御神渡りが出現する位置はどのように決まるのでしょうね?まだまだミステリーです。

出現“しない”原因:近年顕著な温暖化

今でこそ、御神渡りは「今年は出来るだろうか?」「出来た!よかった!」と、さながら「当たり」を祝うような出現率となっていますが、一昔前は「出来て当然」のものでした。

具体的なデータとしては、昭和の63年間で御神渡りが出現した回数は48回、出現率は76%です。それに対し、平成の31年間では9回で29%です。

原因として第一に挙げられるのが「地球温暖化」ですが、「ヒートアイランド」が一因である可能性を指摘する研究もあります。もしもそうだとしたら、「地球」規模ではなく「諏訪湖周」の規模でも、何らかの対策をすれば御神渡りの出現頻度が少しは増えるのかも…ただし、寒いけど!

…などと想像を巡らせてしまいます。

おざわっぷる
かつての「毎年恒例」が今や「希少現象」に…残念さもあるけど、珍しいからこそ注目されるという側面もあるかな。

「出現するメカニズム」も「出現を妨げるメカニズム」も、まだまだベールに包まれていそうな御神渡り。事実を踏まえた上で「こうかもしれない」と思いを巡らすのもワクワクしませんか?そう、科学だってロマンです。

寒さは晴れた風のない夜に

御神渡りが出現するには、とにかく寒くなってほしいところ。では、寒さは一体どうすれば強まるのでしょう?シンプルすぎて難しい問題ですが、1つのカギは「放射冷却」と呼ばれる現象にあります。そしてこの現象は、諏訪の澄んだ空気と盆地という地形にも大きく関係しています。

「放射冷却」という言葉は冬の天気予報で時々耳にする気象用語ですが、この現象自体は字のごとく「熱がまわりに放射されて物の温度が下がること」を指します。充電後のスマホ、手に持っているうちに熱くなくなっていきますよね。

そして、冬の天気予報で最低気温が著しく低くなることが予想される時、その原因として「放射冷却現象が強く起こる」ことがよく紹介されます。気象における放射冷却とは、昼に太陽光を浴びた地表の熱が夜に上空へ放射され気温が下がること。気温が下がれば、もちろん諏訪湖の御神渡りも出来やすくなります。ここで、より気温を下げるためには「熱が逃げること」と「冷気が溜まること」の2つがポイントになります。

熱が逃げるためには、邪魔なものがなければよいのです。その最たるものが、雲です。夜中の上空に雲があると、地表の暖かい空気が逃げにくくなります。つまり、晴れた方が寒くなるのです。

おざわっぷる
空気中の水蒸気、つまり「湿気」も邪魔者…だけど諏訪の空気は1年中カラッとしていることが特徴!

天気が曇ならまだいい方です。雪になると雪雲が大気のふたになるだけでなく、湖の氷の上に積もった雪が直接、氷のふたになってしまいます。氷点下の空気に触れて氷の温度が下がるチャンスが、雪により奪われてしまいます。

おざわっぷる
おまけに氷に雪が積もると、御神渡りが小さい場合発見しづらいという難点も…

雨が降ったら…その時点でもうあまり寒くない証拠ですが、強い雨なら氷はどんどん解けますし、空は雨雲に覆われていますし、湿度は高まりますし、もう絶望的です。

おざわっぷる
「無情の雨」などとも呼ばれることもあるとか。

他にも放射冷却現象を妨げるものの1つに「風」があります。風が吹いた方が寒いのでは…と、意外に思うかもしれませんが、風は空気をかき回してしまいます。せっかく冷えた地表付近の空気が、上空に逃げた暖かい空気と混ざってしまい、地表の気温が下がる効果が弱まってしまいます。

おざわっぷる
全面結氷がまだの場合、風が吹き続けると湖も凍りにくいですね。

強い風のない、穏やかな快晴の日が続くと、御神渡りが出現する可能性が高まると言えます。

ところで、「熱が逃げること」だけでなく「冷気が溜まること」も放射冷却の効果を強めるポイントです。ここで、諏訪湖周辺の地形を見てみると、360度ぐるっと周囲を山に囲まれた盆地となっています。そしてその「お盆」のいちばん底にあるのが、そう、諏訪湖です。諏訪湖の周りは、そもそも冷気が溜まりやすい構造になっているのです。

諏訪湖で御神渡りが出来る一因に、寒さを強める「放射冷却現象」があり、諏訪の澄んだ空気と盆地の地形がその効果を助けている、と言えます。

全面結氷=寒さ×浅さ

2018年2月 撮影:おーむら様(@shinsyulove)

湖が凍るとき、一度に湖面全体は凍らず、少しずつ凍っていきます。諏訪湖では、湖面全体が氷で覆われると「全面結氷した」とニュースになります。また、解ける時も同様で、一気には解けずに氷と水面が同居した眺めもよく見られます。

さて、ここまで「湖が凍る」ことを大前提として説明してきました。ところが、これが実はそう簡単には起こってくれないのです。

みなさまのお住まいの場所に近い湖は、凍りますか?諏訪湖より北にあるのに凍らない湖も数多くあります。寒いだけではダメなのか。一体何が違うのか。キーワードは「深さ」です。

その前に、「寒くなる地理的な要因」として一般的に言えるものを3つ、サクッと1文ずつでご説明します。まずは「緯度」。日本列島では北へ100km進むと気温は約1℃下がります。次に「標高」。高さが100m上がると気温は約0.6℃下がります。最後に「内陸性」。海水よりも陸地の方が温度が変わりやすいため、気温もその影響を受けて内陸の方が夜中にグッと冷え込みます。

おざわっぷる
諏訪湖の湖面の標高は759m。「名古屋(758)より1m高い」と高校の地理の先生に教わりました。

特に「標高」と「内陸性」は信州の大きな地理的特徴ですね。そこへ先ほどの「放射冷却現象」が強く起こると、より一層冷え込みが強まるというわけです。

しかし、です。諏訪湖が他の湖と比較して凍りやすい決定的な要因(筆者感覚)は、その浅さです。

例えば、夏にペットボトルを冷凍庫に入れて飲み物を凍らせるとき、立てて置きますか?それとも倒して置きますか?早く凍るのは後者です。これは、垂直の長さが短い、つまり深さが浅い方が「全体の温度が均一になりやすい」ためです。湖もこれと同様に、最大深度が深い湖ほど、湖全体の温度が下がるのに時間が掛かってしまいます。諏訪湖の最大水深は7.2mです。寒い上に浅いので、凍りやすいのです。

ちょこっと補足Part2。水が一番重くなるのは約4℃の時なので、水温が4℃以上の状態から下がっていくと、4℃の水が下から少しずつ溜まっていきます。上の方の水が冷やされ、4℃になり、沈み、4℃の水の層が厚くなり…やがて上から下まで湖の水全体が4℃になります。この状態になるまでに、深い湖ほど時間が掛かってしまいます。凍るのは、そこからさらに水温が下がってからのお話。なので、深い湖は凍るのが難しいというわけです。

残念ながら諏訪湖でも、御神渡りはおろか全面結氷自体珍しいものという印象が、近年は強まっています。しかしながら、頻度は減っても凍るときには凍ります。

2006年1月 Ⓒ諏訪市

全面結氷は1月中旬以降に見られることが多いですが、2005年には12月に全面結氷しました。年明けには最低気温-10℃以下の日が続き、2006年1月10日に御神渡りが出現、13日に拝観式が執り行われました。この拝観式の日は、明治以降の記録としては1904年(明治37年)と1927年(昭和2年)の1月9日に次ぐ2番目の早さです。御神渡りの高さは最大約60cm、氷の厚さは最大約20cmだったそうです。約80年の時を越えて、このように異例なことも起こります。なので今後も十分に起こり得ると期待しています。

湖が凍るということ。御神渡りの出現にとっては大前提のスタートラインですが、そもそもそれ自体が、いとおしい自然の産物なのです。

おざわっぷる
諏訪湖は浅いけど、なかなか「深い」話ですね…(笑)

「プレッシャー・リッジ」という地学構造

2018年2月 撮影:しおこー様(@Salt_Island_)

御神渡りの筋そのものは「両サイドから押されて割れてせり上がる」ことにより出現します。このような構造のせり上がりは「プレッシャー・リッジ」と呼ばれます。英語でプレッシャーは「圧力」、リッジは「尾根」。諏訪湖のように比較的広い凍結湖で出現する場合「氷丘脈(ひょうきゅうみゃく)」とも呼ばれます。御神渡りはまさに「圧力に押されてせり上がって出来た氷の山脈」なのです。

2018年2月 撮影:しおこー様(@Salt_Island_)

余談ですが、このプレッシャー・リッジの原理、つまり御神渡りが出来る仕組みは、プレートテクトニクスに基づいた、山脈が形成される原理とほぼ同じだそうです。となると、御神渡りは「山脈の形成過程がわかるミニチュア」とも言えるのかもしれません。

2018年2月 撮影:しおこー様(@Salt_Island_)

そして湖の氷ではなく、断層の動きによって地盤が押されて盛り上がったプレッシャー・リッジが、なんと諏訪地域の南東部、諏訪郡富士見町で見られるようです。これは日本列島を二分する大断層帯、糸魚川静岡構造線の活動によるものです。

凍った湖の氷の盛り上がりと、断層の動きによる地盤の盛り上がり…同じ諏訪盆地内で、別物だけどよく似た現象が起こるなんて、偶然にしてはすごすぎます。諏訪盆地はなんという地学的な魅惑満載の場所なのでしょうか。寒さが吹っ飛ぶくらいの熱さを感じてやみません。

おざわっぷる

ちなみに諏訪湖自体がそもそも、糸魚川静岡構造線の活動によって出来た地形。押されて盛り上がるのとは真逆の、引っ張られてへこんだ溝なのです。

氷の山脈、御神渡り。珍しくて神秘的な現象です。しかしそれ以前に、そもそも湖が凍ること自体奇跡的な出来事であり、「冬には寒くなる」という当たり前のことでさえ、実は沢山の要素が組み合わさって起こるものなのです。そう考えると、何もかもがドラマチックに思えてきます。

世界的な超長期定点気象観測記録

御神渡りは毎年、諏訪市の八劔神社(やつるぎじんじゃ)によって観測・記録が続けられています。その記録が、生態学の研究論文に活用されたことがあります。なんと、アメリカの学者を中心とする国際的なチームによって。

国へ報告され続けて570年以上

御神渡りの記録は、1443年以降毎年記録され、現在も続いています。『当社神幸記』(1443~1681)、『御渡帳』(1682~1871)に書かれた、その年の記録が残されています。現在は『御渡注進状』に観測結果などが記録されています。

画像提供:下諏訪観光協会

御神渡りの拝観式では、「一之御渡」「二之御渡」「佐久之御渡」の3本の筋の下座(くだりまし:起点)と上座(あがりまし:終点)が見定められます。その後、その結果が過去の記録と照らし合わされ、その年の気候や農作物の豊凶、世相の吉凶などが占われます。それらの内容は八劔神社の宮司らによって、諏訪大社上社の神前に捧げられます。

それを受け、諏訪大社は御神渡りの状況や占いの内容を宮内庁と気象庁へ報告します。かつては幕府、古くは朝廷へ報告していました。

それが毎年続けられ、実に570年以上に渡る気象状況の定点観測記録となっています。御神渡りが出現しなくても「出現しなかった」旨が記録されるので、現在も毎年更新中です。

世界的な科学誌に”omiwatari“の文字

御神渡りの出現日などの記録は、「同じ湖が凍る様子を観測し続けた570年分のデータ」と見ることができます。この点に目をつけたのが、昔の気候データを探していた科学者たちです。近代的な観測が始まる前の気候については、世界的にも手掛かりが非常に少ないようです。

2016年、アメリカ、ウィスコンシン大学の生態学者が率いるチームの研究結果が、科学誌の権威『ネイチャー』のオンラインジャーナルに掲載されました。その研究は2箇所の観測地のデータを比較して行われたものです。1箇所は諏訪湖、もう1箇所はフィンランドとスウェーデンの国境を流れるトルネ川。研究によると、どちらの観測地でも結氷・解氷のリズムと大気中の二酸化炭素濃度との関連が次第に強くなっているそうです。

この研究内容が、世界の180か国以上で定期購読されている学術雑誌『ナショナルジオグラフィック』でも紹介されました。英語版には“Lake Suwa”omiwatariの文字や、八劔神社の宮司さんらによる拝観式の様子の画像もあります。(※リンク先は日本語訳ページです)

ナショナルジオグラフィック日本版サイト記事(2016年5月2日)

まさかこんなにもワールドワイドな内容の研究に貢献するとは、ほとんど誰も思っていなかったことでしょう。僕もこのニュースを知った時、非常に驚いて興奮したものです。継続は力なり、ですね。

おざわっぷる
「お天気博士」の愛称で親しまれた、中央気象台(現:気象庁)の第5代台長・藤原咲平さんも、独自に御神渡りの研究をされています。現在の諏訪市出身。

諏訪湖以外の御神渡り

御神渡りが出現するには、実にさまざまな条件がそろう必要があります。その点、諏訪湖は非常に恵まれた奇跡の湖です。しかし、言い換えれば「条件さえそろえば出現する」はず。ここでは、諏訪湖以外の出現例をいくつかご紹介いたします。「じゃない例」もあるのでご注視くださいませ。

おざわっぷる

ひいき・無視・ねつ造しない、それが科学!

国内で有名なのは北海道

最も有名なのは北海道の東部、釧路総合振興局の弟子屈町にある屈斜路湖(くっしゃろこ)でしょう。悔しいことに屈斜路湖の御神渡りは、とてもはっきりと大きく長く現れ「日本最大の御神渡り」と呼ばれています。さすがは北海道ですね。

ちなみに諏訪湖の面積は12.81平方キロメートルで信州最大を誇りますが、屈斜路湖は79.54平方キロメートル。諏訪湖の6倍以上の面積があり、全面結氷する淡水湖としては日本最大です。標高は121m、最大水深は117.0mと、諏訪湖より638mも低くて109.8mも深いですが、はるか北の大地、それらをカバーするくらいに寒~い!ということなのでしょう。

他には同じ弟子屈町の摩周湖や、釧路湿原にある塘路湖(とうろこ)などでもよく見られるようです。

余談ですが、海外の例ではロシアのバイカル湖が有名です。世界最深の湖なのですが、極寒のシベリアの大地が御神渡りを出現させるのでしょう。もっとも、”omiwatari”などとは呼ばれていませんが、氷の山脈というより氷の岩がそこら中にゴロゴロ現れるらしく、スケールのちがいを感じます。

かつては八ヶ岳を越えた湖でも出現か

八ヶ岳の東側、南佐久郡小海町に「松原湖」と呼ばれる湖があります。猪名湖(いなこ)、長湖(ちょうこ)、大月湖の3つの湖の総称なのですが、一般的に「松原湖」と呼ばれるのは、最も面積が大きい猪名湖のことです。

2018年12月 撮影:じょー様(@t_joe_san)

この猪名湖、通称松原湖に、かつては御神渡りが出現したと言われています。役場の方のお話によると、江戸時代には出現したようですが、文書などの記録がなく、定かではないようです。

松原湖は標高1,123m、最大水深7.7mで、諏訪湖より374mも高くて0.5mだけ深い湖です。条件が似ているところも確かにあるように思えます。

また、諏訪湖の御神渡りには「諏訪大社の神が氷上を渡った道」という伝説がありますが、松原湖のほとりには「松原諏方神社」があります。諏訪大社と同じく湖の南側に「上社」、北側に「下社」があり、両社とも建御名方命(諏訪大社の男神)、事代主命(建御名方の兄)、下照比売命(建御名方の姉)の3柱が祀られています。どうやら松原湖は「諏訪信仰」という点でも諏訪湖と共通点があるようです。

富士山のふもとで御神渡り

信州のおとなり、山梨県にも御神渡りが出現することのある湖があります。富士五湖の1つ、山中湖です。

山中湖の面積は6.57平方キロメートル。諏訪湖の約半分ですが富士五湖の中で最大です。一方、最大水深は13.3mで諏訪湖の倍近くありますが、富士五湖の中で一番浅いです。そして標高は980.5mで諏訪湖より221.5m高いです。諏訪湖よりもやや南にありますが緯度は大きく変わりませんし、諏訪湖ほどではないですが海から離れた内陸部です。標高の高さや水深の浅さに関しても、条件的に諏訪湖と似ている点が多く見受けられます。

おまけに、2006年や2018年など、御神渡りの出現年が諏訪湖と重なることもあるようです。もしかしたら、諏訪湖に出現した年は山中湖にも注目すると面白いかもしれませんね。

とは言え、本州で本格的に御神渡りを観測出来る湖は、諏訪湖をおいて他にはありません。あっぱれ。

おざわっぷる
これはひいきではありません。事実です!(笑)

※御神渡りと似て非なるもの

2018年2月 撮影:筆者

こちらは諏訪湖畔ですが、割れた氷の列に見えるものは御神渡りではありません。恐らく全面結氷前の薄い氷が風で流されるなどして、湖岸に打ち上げられてそのまま残り、それが繰り返し起こって氷が折り重なったものと思われます。

似たような原理で、全面結氷していない湖の中に小さな氷の盛り上がりが出来ることもあります。これは薄い氷の島たちが風で流されてぶつかり、その氷同士の衝突面が割れるなどしながら凍ることにより出来る筋、と考えられます。まるで1枚の氷の真ん中に氷の山脈が出来たように見えるので、「御神渡りみたい!」と思うかもしれませんが、みなさまはもうおわかりですよね。

御神渡りを科学でまとめ

「御神渡り」=「全面結氷した湖の氷が膨張と収縮を繰り返し、圧力で割れてせり上がった氷の山脈」

これ自体が神秘的な自然現象で科学満載です。しかし、その観測記録やデータ活用も科学のスピリットのたまものです。そして、内陸性や盆地という地形といった、諏訪湖周辺の地理的立地条件も、おおまかにおわかりいただけましたら幸いです。

最後の独り言。諏訪湖は最大水深7.2mの浅い湖ですが、湖底の泥や土砂などの下にある固い地盤は水深500mのところにあるという調査結果もあります。たとえではなく、諏訪湖は実は本当に深~いのかもしれませんね。

おざわっぷる
あれ…?でもそれじゃ凍りにくいはず!やっぱやだ!(笑)

 

さて、科学の魅力が盛り沢山な「御神渡り」ですが、歴史や伝説についても気になりませんか?絶景写真でオススメ鑑賞スポットもご紹介する、歴史編はこちらです!

 

 


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