天保3年創業 松本市の老舗味噌屋「萬年屋」味噌玉造りと地元産原料へのこだわり

こんにちは、Skima信州ライターの宮田です。

松本市には信州味噌ブランドのお店がいくつかありますが、今回は松本城のすぐ近くで約200年続く老舗を取材しました! 大学の先輩の縁で2019年から毎年味噌仕込みアルバイトをしています。そんな体験談も織り交ぜながら紹介します。

萬年屋(まんねんや)とその歴史

萬年屋は松本城直下にある信州味噌のお店。江戸時代から続く由緒ある老舗です。松本城の北側、お堀の外側に本店が、大名町通りに大名町店があります。現在は味噌玉から作る信州味噌を目玉にいろいろな商品を作っています。

お店の歴史は1832(天保3)年にまで遡ります。当時は麹屋として創業し、各家から運ばれた米を味噌の原料となる麹に加工していました。当時はどの家庭でも味噌を作るのが一般的であったといいます。味噌を売り始めたのは明治の半ばからで、大正、昭和を経ても麹の加工という仕事が多かったそうです。

編集部

当時は麹と米を交換してもらいに、遠くから台車を引いて来る人がたくさんいたそうですよ。

萬年屋の麹(味噌仕込みに使うもの)

味噌は味噌玉から作っていましたが、戦中や終戦直後の混乱期には味噌玉を熟成させる余裕がなく、熟成させずすぐ味噌にする製法を取り、いわゆる白味噌を作っていました。お店が落ち着いてきた1970年代、伝統的な製法を店の目玉とするべく味噌玉造りを復活させました。このときの工夫は少人数で仕込みできるようにすることです。チョッパー等の機械を積極的に導入することで、最低3人で仕込みが回せるようになりました。このときの機械の多くが現役で、今も味噌玉造りを支えてくれています。

チョッパー。2021年の仕込みをもって新しいチョッパーに交換するそうです。少しさみしい…

昔はどの家庭でも味噌玉から味噌を作りました。家族が多かったため、味噌の消費量も多かったそうです。そして、およそ80代以上の方は市販されている味噌を「買い味噌」と称して自分で作った「味噌」と区別しています。

どうやら味噌を買うというのは、少なくとも松本周辺では、新しい文化のようです。現在では発酵が進む前の仕込み味噌を買っていって自宅で熟成させる方もいますが、このような様子が見られるようになったのはつい最近のことです。

萬年屋のこだわり① 味噌玉造り

味噌玉用の味噌を作っているのが萬年屋の最大の特徴です。味噌の仕込み時期は3月から4月。冬は寒さと乾燥で熟成せず、夏は熟成前に腐敗しきってしまうため、この僅かな期間が味噌仕込みの旬です。せっかくなので、この過程を詳しく書いていこうと思います。

手前の柱の中がリフトになっていて、大豆が持ち上げられ、奥の洗浄場に移されます。(提供:萬年屋)
大豆を運ぶリフトがたまりません。萬年屋のアイドルです(提供:萬年屋)

洗い終わった大豆は二階に吸い上げられ、タンクで一晩蒸されます。

タンクを開けると大豆の甘い匂いが蔵を覆います。

蒸された大豆を機械ですり潰し、パン生地のようになったものを形を整えてすのこに並べます。

味噌玉を切るのは父親、並べるのは息子の仕事です(提供:萬年屋)

このとき、通気性を良くするために味噌玉を二つに割ります。

味噌玉を蔵に移し替える作業。1玉6kg、半分に割っても3kgで、並べ終わる頃には腕が上がらなくなります。

ここから2週間放置。蔵の菌の力で熟成を進めます。ある程度熟成したら仕込みの後半です。

熟成すると飴ができます。これは削ぎ落としてしまいますが、食べても健康上の問題はありません(提供:萬年屋)

発酵した味噌玉のカビを適度に落とします。このカビには悪い成分は入っていません。

味噌玉を水に浸し、タワシなどでカビを擦り落とします。全て落としきらないのがポイント!(提供:萬年屋)

洗った味噌玉を砕き、麹、塩、水と混ぜて機械で撹拌します。

kくく砕かれた味噌玉(提供:萬年屋)
原料を混ぜ合わせ、撹拌します。一番の力仕事です!(提供:萬年屋)

夏の間は土蔵の中で熟成させて完成です!

萬年屋のこだわり② 松本産の大豆と米を使用

萬年屋では現在、松本産の米と大豆を使った味噌作りをしています。

かつては国外産の大豆を使用していましたが、食の安全や地産地消を意識して国産に、その後長野県産にと徐々に切り替えていきました。いつか松本産のものを使いたいと思っていた矢先、そのチャンスが訪れました。それは大名町に2017年からお店を出している農業法人かまくらやさんと出会ったことです。かまくらやさんは2010年頃から松本周辺の耕作放棄地を利用してそば粉や大豆、お米を育てており、その取組みが評価されて農林水産大臣賞を受賞しています。このうち、松本市四賀で栽培している大豆と米を萬年屋の味噌に使っています。

ちなみに萬年屋ではかまくらやさんの棚田のオーナーに登録しており、仕込み用の米については、田植えから稲刈り、はぜかけまで家族総出で面倒を見ているそうです。

麹用の米の収穫の様子(提供:萬年屋)

萬年屋の味噌を食べよう

味噌は萬年屋HPから購入できますが、オススメは城東の本店、大名町店で直接購入することです。というのも、5種類の味噌を食べ比べることができるためです。松本観光、松本城散策のついでにふらっと立ち寄ることができますので、お近くに足を運んだ際にはぜひ。

本店の味噌販売コーナー

私のオススメ味噌は「豊麗」と「長熟」です。「豊麗」は大豆と麹を同量で仕込んだ味噌玉造りの味噌で、蔵に棲み着くさまざまな菌によって熟成の進んだ味噌の複雑な香りと味が楽しめます。味噌汁にしても良いですし、キュウリにつけて食べるも乙です。「長熟」はいわゆる二年味噌で、土蔵内で2年間じっくり発酵させています。ブルーチーズのような香りが特徴の、どこかエキゾチックな味噌です。この二種類を合わせて味噌汁に入れるのが僕のオススメの食べ方です。

それぞれの詳しい特徴は萬年屋HP「味噌商品のご案内」にありますのでご覧ください。

一番人気「豊麗」

ちなみに、本町の裏にある定食屋「うらしま」では萬年屋の味噌を使っているそうです。私も先日うらしまに行く機会があり、定食の写真を撮っていました。実は萬年屋の味噌を使っていると知らずに行ったのですが、家庭的な優しい味つけの鯖料理と味噌汁との相性の良さに舌鼓を打ったことを覚えています。

定食屋「うらしま」の定食

ほかにも、「ヒカリヤヒガシ」などでも萬年屋の味噌を使っているそうです。女将さんは「松本の信州味噌を地元のお店で使ってもらえるようにこれからも営業を頑張ります!」と意気込んでおられました。

さらに萬年屋を知りたい方へ

萬年屋では女将さんがHPやInstagramを積極的に更新していて、味噌以外の商品、味噌を使った料理などをゆるく紹介しています。こちらも良ければご覧ください!

萬年屋さんのSNS
萬年屋HP
萬年屋ブログ
萬年屋Instagram
萬年屋YouTubeチャンネル

▼読み物系の記事はこちら

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この記事を書いた人

宮田 紀英

長野県池田町で蝶と蛾を中心とした自然写真の撮影を行っています。毎夏蝶の写真展を開催、フリーペーパー「いけだいろ」では自然に関する記事を執筆中。最近は山村集落探索や神社巡りも趣味。日本自然写真科学協会(SSP)会員、長野県地理学会、松本むしの会等所属。

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