こんにちは、ブロガーのaki(@pochannay)です。
わたしの嫁ぎ先は、長野のリンゴ農家。広大で日当たりのいい斜面に、200本ほどのリンゴの木があります。
品種もさまざまで、定番の「サンふじ」はもちろん、長野の”りんご三兄弟”と呼ばれている「秋映」「シナノスイート」「シナノゴールド」など、常時7〜8品種ほどの木があります。
でもね、実はうちのりんご園の中に、1本だけ市場に出回らない幻のリンゴの木があるんです。
それは、りんご農家にしかない「受粉用のりんご」です。このりんごで作るジャムが、とってもおいしいんですよ!
ひと回り小さい受粉用のりんごは手のひらサイズ。気になるお味は?
これが、今回ご紹介する幻のりんごです。
サイズ感がわからないので、手のひらにのせてみた様子がこちら。
ずいぶん小ぶりなりんごですよね。わたしの手が大きいわけではありません。
実はこのりんご、生食用には適しません。なぜかというと、味がマズイ。
ナマで食べると、渋くて酸っぱくて、めちゃくちゃマズイりんごなんです。
マズくて、果肉も小さいりんごなので、もちろん市場に出回るはずはありません。だから幻のリンゴなんです。
しかしこの受粉用のりんごには、秘められた才能が! それが果肉の色
ほとんどの農家で、おいしくないという理由で放置され、収穫もされずして落下して腐っていくりんごですが、実はひとつだけステキな特徴があるんです。
それが果肉の色。
受粉用のりんごを2つに割ってみると、中身はびっくり、鮮やかな赤色をしています。
まるでリンゴの皮のようなキレイな色。イチゴのようでもあり、すごく美味しそうなんですが、残念ながらマズイんです。
生食ではマズイりんごでも、加工用としては絶品。酸味があるのでジャムに最適
鮮やかなピンク色の受粉用のりんごは、果肉に火を通してもピンク色をしています。見た目はまるでイチゴジャム。特別な作業をすることなく、果肉を煮るだけでこの鮮やかな色のジャムに仕上がります。
味もめちゃくちゃおいしい!
ヨーグルトに混ぜてよし、パンに塗ってよし、お料理のソースの隠し味にするのもよし。
よくジャムに加工するりんごは、「紅玉」が最適と言われていますが、それはなぜだかご存知ですか?
それは、紅玉という品種が、とても酸味のあるりんごだから。
ジャムに加工するりんごは、甘いだけではおいしくありません。なので、レモン汁などを入れて少し酸味を足して味にメリハリを出すんですが、紅玉の場合はりんご自体に酸味があるのでおいしく仕上がるのです。
そして紅玉のジャムは、皮を煮出すことによって鮮やかな赤色が出ます。
紅玉のジャムが赤いのは、皮の色を煮出したからです。でも、黄色いりんごジャムと赤いりんごジャムがあったら、赤いりんごジャムの方がなんだか美味しそうに見えませんか?
受粉用の果肉が赤いりんごを使えば、目にも鮮やかなピンク色がカンタンに出せるのです。
りんごジャムの作り方の基本
りんごジャムの材料
- りんご(皮をむいてタネをとった後の正味量をはかる)
- 砂糖(りんごの正味量の30%)
- レモン汁(なくても良い)
りんごジャムは、煮詰めればとろみが出るので、レモン汁を入れないと固まらないということはありません。食用の甘いりんごの場合は、味の調整でレモン汁を入れた方がおいしく仕上がりますよ!
りんごジャムの作り方
- りんごの皮をむいて、砂糖をまぶして2時間ほど放置
- りんごから水が出たら弱火でとろみが出るまで煮る
とってもカンタンですよね。
だけど、ほとんどの農家では、このりんごを放置して腐らせてしまうんです。それはなぜか?
りんごが小さすぎて加工がめんどくさすぎる。つまり大量生産はできず、自家用にしかならない幻のジャム
4つに割ってみると、もはや親指サイズ。小さすぎます。
これ、皮むいて、タネ取って…なんてやってたら、ものすごく骨の折れる作業。
しかもこのりんごが実る9月の下旬ごろは、りんご農家の忙しい時期に突入しているので、ヨメぐらいしかこの作業をできる人がいません。w
ということで、ほとんどのおうちでは、一手間をかける”ずく”(長野の方言)もなく、手をつけずして腐らせてしまうのです。
鍋いっぱいにりんごを入れて煮ても、かさは半分程度になってしまいます。
しかしながら、わが家では、子どもも旦那さんもこのりんごジャムが大好きすぎて、たくさん作ってもあっという間になくなってしまいます。
受粉用のりんごは、すべてのりんご農家にあるとは限らないけど、ぜひ存在を知ってあげてほしい
そもそも「受粉用のりんご」って何?って思うかもしれません。
りんごの実を成らせるには、受粉が必要不可欠です。
受粉は、りんごの花のめしべに、おしべの花粉がくっつくことです。自然の状態だと蜂さんが花粉を運んでくれます。
りんごが受粉するにあたって、なんでもOKかというとそうではなくて、違う品種同士で受粉しないと実にならないという、りんご界のルールが存在します。
例えば、ふじのめしべに、ふじの花粉をつけてもダメという感じ。
なので、りんご園の中にオールマイティな特殊なりんごがあると、自然に実が付きやすくなるんです。
最近では、「人工授粉」をしている農園もあって、その場合は、人間が手で花粉をポンポンとつけてあげる作業をします。
長野のおいしいりんごは、「受粉」があってこそ、実が成ります。おいしいりんごが出回る裏側で、全然日の目を見ない、小さな赤いりんごが、うちのりんご園では縁の下の力持ちをしてくれているんですよ。