今はなき「信越本線」とは?おすすめ廃線スポットもご紹介

今はなき「信越本線」とは?!おすすめ廃線スポットもご紹介

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信越本線(しんえつほんせん)は信州(長野県)と上越(新潟県)を貫いていた路線です。

長野県に新幹線が走るようになって今年で27年。信越本線の大部分は現在「しなの鉄道」として運行されていますが、かつては日本の近代化に大きく貢献。一部廃線になった区間には国の重要文化財に指定された建造物も多く保存され、今では誰でも気軽に訪れることができるスキマスポットになっていますよ。

今回はそんな信越本線の歴史や魅力、また今でも歩けるおすすめの「廃線スポット」をまとめてご紹介します!

▼信越本線の立ち入り禁止エリアを歩ける廃線ウォークの様子はこちら!

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かつての大動脈「信越本線」とは

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「信越本線」とは群馬県の高崎駅を起点に長野駅を経由し、新潟駅までいたる元JRの長大路線。当初は旧国鉄の前身である「官設鉄道」が東京と京阪方面を結ぶ「中山道幹線」として建設が進められた路線でした(のちに東海道線に計画が変更)。

信越本線の全線開通は1907年ですが、先行開業した時期まで遡ると以下のようになります。

①1885年:高崎〜横川間
②1888年:軽井沢〜直江津間
③1893年:横川〜軽井沢間
④1907年:直江津〜新潟間を北越鉄道から信越本線に編入

日本で初めて鉄道が開通したのが1872年(新橋〜横浜間)なので、その僅か13年後にはすでに線路が敷かれていることからもまさに国を上げた早期鉄道整備プロジェクトであったことがうかがえます。

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その後信越本線は東京方面に直通する路線として、当時重要な外貨獲得手段であった生糸を大量に輸送するなど日本の経済発展に大きく貢献。戦後は普通列車の他、東京を発着する特急「あさま」や「白山」、夜行「能登」など多くの優等列車が運行されていました。

新幹線の登場で「3つの運命」に分かれた信越本線

北陸新幹線の整備計画が決まったのは1973年。

開通すれば東京と長野、さらには北陸三県を経由して将来的には大阪をつなごうという一大プロジェクトです。しかし2つの路線を共存させるのはJRにとっては過重な経営負担になることが見込まれます。

在来線は新幹線開業後も地域の足としての役割を担う必要があるため、信越本線では「存続」「廃止」「経営分離」の3つの区間を定めることに。これにより信越本線は1997年9月30日を最後に100年以上続いた歴史に幕を下ろすことになったのです。

新幹線開業で分断された信越本線

・高崎〜横川      :JR信越本線として存続
・横川〜軽井沢(碓氷峠):廃止(廃線)
・軽井沢〜篠ノ井    :しなの鉄道として経営分離
・篠ノ井〜新潟     :JR信越本線として存続

篠ノ井〜新潟間のうち、長野〜直江津間は2015年、北陸新幹線が金沢まで延伸した際、しなの鉄道・えちごトキめき鉄道に経営分離されました。

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終点横川駅に停車中のJR信越本線高崎行き211系。かつては軽井沢と隣り合う途中の駅でしたが、現在では「信」にも「越」にも行けません。
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軽井沢駅にて停車中のしなの鉄道115系(写真左)と静態保存されているEF63電気機関車(写真右)どちらも信越本線で活躍していた元JRの車両です。

信越本線唯一の廃線区間「横軽」とは

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当時の横川〜軽井沢間を再現した鉄道模型。安中市観光機構のオフィスで展示中。

信越本線で唯一廃止となった横川〜軽井沢間(横軽)。いったいなぜそこだけ廃線に…それはズバリ「交通の難所」であるという点にあります。

「横軽」は群馬と長野の県境に立ちはだかる険しい「碓氷峠」を越えなくてはならない11.2kmの区間。碓氷線とも呼ばれ、群馬県側の横川駅(386m)と長野県側の軽井沢駅(939m)はなんと553mの標高差があります。66.7‰(※)で敷かれた線路はまさに規格外。一般的な鉄道では国の基準でも35‰が限度と言われているので、碓氷峠はそれをはるかに上回る日本一の急勾配区間でした。

(※:66.7‰「パーミル」。1km進むごとに66.7m上昇する勾配を表す)

つまりこの区間を安全に運行するためには全国的にも珍しい特殊な車両や鉄道設備、それを維持するためのコストとそれに見合う安定した収益が必要だったのです。

わずか1年半で500人以上の殉職者を出しながらの難工事で敷かれた横軽ですが、新幹線の開業による乗客の減少は避けられず、しなの鉄道に経営を移管しても採算が取れないため廃線となりました。

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こうして横川駅は「JR信越線」の終点駅、軽井沢駅は「しなの鉄道」の起点駅に。現在両駅間はJRが路線バスを走らせ、移動手段を確保しています。(1日7往復)

横軽区間の鉄道廃止前・廃止後の所要時間および運賃を比較してみました。

信越本線:11.2kmを17〜24分で結ぶ。片道230円
路線バス:23kmを34分で結ぶ。片道520円(小児260円)

路線バスは通年碓氷バイパスを走行します。GWやお盆などの期間には臨時便が設定され1日8往復。

【お問い合わせ】
JRバス関東小諸支店 0267-22-0588(9:30-17:00)

横軽の見どころは「旧線」と「新線」にあり

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新線の区間はイベント時以外立ち入りが禁止されています。

横軽には旧線と新線、2種類の廃線ルートが存在します。

1893年、横川〜軽井沢間の開通から70年ほどは、ドイツの山岳鉄道で採用されていた「アプト式」を採用。線路の真ん中に「ラックレール」と呼ばれるギザギザのレールを設け、機関車の底に取り付けた専用の歯車を噛み合わせることで急勾配を克服していたのだそうです。

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JR横川駅に展示されているアプト式鉄道の模型。枕木中央に歯車が取り付けられている。
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横川駅近くの道路にて。役目を終えたラックレールを使って側溝に蓋がされている。

しかし年月が経つにつれて設備は老朽化。速度が遅く単線だったアプト式では過密化していくダイヤへの対応に輸送力が追いつかず限界を迎えていました。そこで当時の国鉄は碓氷峠専用の新型電気機関車「EF63」を開発。アプト式を廃止し、上下に1本ずつ線路を敷けるよう新たなルートの建設に着手。1963年に開通し「碓氷新線」として生まれ変わりました。

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碓氷新線は一般的な線路。車輪とレールの摩擦のみで走行し、速度アップと輸送力の強化が図られました。

こうして高度経済成長の時代を駆け抜けて、昭和から平成へ。新幹線開通までの34年間、信越本線は東京と長野を結ぶ基幹路線として最後の役割を担ったのです。

一見の価値あり!誰でも気軽に楽しめる信越本線の「廃線スポット」

かつては日本屈指の急勾配線区を抱えた信越本線、碓氷峠。

その歴史を今に伝える廃線跡は現在、誰でも気軽に楽しめる観光地として整備されました。個人的におすすめな「廃線スポット」をいくつかご紹介します。

碓氷峠鉄道文化むら

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かつては「横川運転(機関)区」と呼ばれ、峠越えのために配備された補助機関車の車両基地でした。信越本線の歴史のみならず、国内各地で活躍した車両を展示するテーマパークとして1999年にオープン。EF63型電気機関車の運転体験のほか、碓氷峠の貴重な鉄道資料が多数展示されています。

遊歩道「アプトの道」

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JR横川駅〜峠の湯〜旧熊ノ平駅の約6kmの区間。線路はアスファルトで埋めたり撤去されるなど、アプト式時代の旧線が遊歩道として整備されています。登山の格好でなくても安全に歩くことができます。

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トンネル内は照明が点灯しており(朝7:00〜夕18:00まで)、通年&終日無料で開放。レンガの壁を触ると蒸気機関車の煤で真っ黒になるのでご注意を。

丸山変電所

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アプト式時代に使われていた変電所。1994年に国の重要文化財に指定され、2002年に修復完了。横川駅から遊歩道「アプトの道」を歩いていくと右手に見えてきます。

めがね橋

アプト式時代に使われていた、煉瓦造りのアーチ橋で国内最大級!こちらも国の重要文化財。

しげの秀一さん原作、峠の走り屋をテーマにした人気漫画「頭文字D」にも描かれています。

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橋の上はアプトの道として整備されていて、自由に歩くことができます。

旧熊ノ平駅

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アプト式時代には熊ノ平信号場として蒸気機関車の給水・給炭場、列車交換が行われていた場所。線路はもちろん、架線や電柱もそのまま残されています。いまにも電車がやってきそう!

信越本線とは?おすすめ廃線スポット まとめ

今はなき「信越本線」とは?!おすすめ廃線スポットもご紹介

廃線となった信越本線の魅力や歴史、おすすめスポットをまとめてご紹介しました。

普段は立ち入り禁止になっているエリア「新線」を踏破する安中観光機構主催の「廃線ウォーク」イベントにも参加してきた様子は、また別の記事で取り上げています。

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この記事を書いた人

おぼぼ

東京生まれの柏育ち30代。元々縁もゆかりもなかった長野の人々や歴史、文化に触れて長野の魅力に取り憑かれる。何度か足を運ぶうちにひょんなことからSkima信州で記事を書く事に。大の山好きで趣味は写真、温泉巡り、車いじり、ロードバイク、スノボーなど。