池田町発フリーペーパー「いけだいろ」がつくる、知る・考える・理解するの先のこと。

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「知るキッカケと、考える機会を」

そんな思いを紙に載せて、池田町から発信を続ける団体があります。以前「いけだいろ」にてSkima信州編集長と副編集長がインタビューを受けて以来、親交のある信州池田活性化プロジェクト「Maple Tree(メイプルツリー)」さん。

「じゃあお返しにスキマでも記事にしますよ」なんて言ってから半年以上が経ちました。この度発足5年目を迎えられたということで、満を持しての密着インタビュー!

  • 「いけだいろ」を発行する団体「Maple Tree」とは?
  • なぜ今、フリーペーパーなのか
  • 大人気企画「宮田島」の取材に密着!
  • 5年目を迎えた「Maple Tree」のこれから

について伺いました。

信州池田町活性化プロジェクト「Maple Tree」とは?

信州池田活性化プロジェクト「Maple Tree」(以下:メイプルツリー)は、池田町の魅力を再発見し、池田町内外の方に知ってもらいたい!という想いから2015年3月6日に設立されました。発足当時、メンバーは全員大学生。現在5名で活動する彼らは、大学生〜社会人までそれぞれの道を歩みつつ活動しています。

名前の由来は池田町のシンボル“七色大カエデ”から

団体名「Maple Tree(直訳すると“カエデの木”)」の由来は、秋になると池田町を彩る“七色大カエデ”。フリーペーパー「いけだいろ」も、七色大カエデのように、色とりどりに染まる池田町の色を発信したい想いが込められています。

七色大カエデ。

フリーペーパー「いけだいろ」の発行

フリーペーパー「いけだいろ」の創刊号は2015年6月に発行されました。「池田町に関する人や池田町内外の情報発信」を目的に、当時4名だったメンバーで0から取材・制作。2019年3月で17回目の発行を迎えます。

大きなテーマを、小さな視点で

いけだいろには、いつも身近な顔や声がたくさん詰まっています。例えば「いけだいろ」2号の特集テーマは「戦争の話、聞きました」。戦争という大きなテーマで、池田町在住の戦争体験者4名にインタビューしています。

「戦争の話は世の中にたくさん出回っている。テーマが大きすぎて身近な話には感じられないからこそ、あえて池田町で戦争体験者に話を聞くことに意味を感じました」と代表の伊藤さん。

他にも「囲炉裏」をテーマに、新築至上主義が騒がれる昨今にあえて古民家などで「囲炉裏生活」を選択する人々にインタビューする特集も。「暮らし」と「人」にフォーカスし、大きなテーマを分かりやすく読者に伝えています。

Skima信州とコラボし「双体道祖神めぐり」を主催

2018年8月にはSkima信州と共同主催した「池田町双体道祖神めぐり」を開催。約20名の参加者とともに池田町の道祖神を解説付きでめぐりました。

イベントの様子も「いけだいろ」にてバッチリレポート!特集も組まれ、メンバーたちは後日、池田町内にある双体道祖神50基以上を全て取材・撮影したようです。

代表 伊藤さん
今までで1番過酷な取材だった・・・。

ちなみにSkima信州では、企画の前身となるインタビュー記事が公開されています。

参考記事:宝さがしのようなワクワク感!『信濃路の双体道祖神』著者が8,000基の道祖神を45年間撮り続けたワケ

「知る」キッカケと「考える」機会を

主にフリーペーパーでの発信を続けるメイプルツリー。代表の伊藤さんに、いけだいろに込めた想いを伺いました。

伊藤さん:いけだいろでは、あえて賛否両論起こる話題を扱うことがあります。プラスな方向でもマイナスな方向でもいいから、とにかく「知る」きっかけを作って、それが「考える」機会になれば良いなあと。

伊藤さん:また自分ごとにすることも大切だと考えています。

ーー自分ごとにする、とは。

伊藤さん:地域課題や地域づくりって、ともすると一部の人がやっている高尚なものに映ってしまうけれど、もちろんそんなことはありません。雑誌などで目立っている地域づくりの事例は、活躍しているヒーローたちが取り上げられがちですが、たいていの人はそんなことないですよね。そうした人たちのスイッチを押して、自分ごととして考えてもらうことで、本当の意味で地域づくりを考える人たちの数を増やしていくきっかけになればと。

ーー小さな視点を取り上げているように見えるいけだいろですが、自分ごとに考えるといろんな地域で起こっている問題ばかりで考えさせられることがあります。

なぜ今、フリーペーパーなのか

ーーちょっと意地悪な質問をひとつ。なぜこのインターネット全盛期にあえてフリーペーパーという媒体を選んだのでしょうか?

伊藤さん:なぜ今、フリーペーパーなのか。まず「紙媒体」にこだわる理由は3つあります。1つは紙媒体によって、インターネットでは届かない、幅広い世代に発信することができるということ。2つ目は、まだまだ地方では紙媒体以外に対する信頼が少ない現実があること。

伊藤さん:3つ目ですが、紙は確かに捨てたら終わりかもしれないけれど、形のないものに価値が高まっている時代だからこそ、形のあるものの価値も同時に高まっていると僕は思っています。手に取れる形にしていることに価値があると思ってくれる人もいると思うので、フリーペーパーでの発信を選びました。

ーー伊藤さんは、大学の卒業論文でフリーペーパーについて取り上げているんですよね。資料として読ませていただきましたが、無料で配布することの意味についても改めて教えてください。

伊藤さん:広く発信するときに、無料であることの意味については論文でも考察しました。無料だからこそ、普段興味関心のない人でも4割くらいの人が手に取ってくれるというデータがあります。地域や池田町に興味のない人でも、無料だから手に取ってくれる。フリーであることによって、手に取るハードルを下げ、知るきっかけを増やすのではないかなあと思っています。

ーーこの辺りに興味のある方は、ぜひ伊藤さんの論文をご覧ください。「地方社会の地域課題解決における地域メディアとしてのフリーペーパーの可能性」というタイトルで、5万字あります。

伊藤さん:ご連絡いただければ、いつでも公開しますよ〜。

ーーいつか書籍化しそうな量と内容。読むのにトータル4日くらいかかりました。

そんな想いのこもったメイプルツリーと「いけだいろ」の今後について伺う前に、人気企画「宮田島」に密着した様子をレポートします。

人気企画「宮田島」の取材に密着!

「いけだいろ」人気企画のひとつ「宮田島」。蝶と蛾に詳しいメンバー2名が、読者を置いてけぼりのまま熱いトークを繰り広げます。最近では自然に詳しくないメンバーも同行しながら、採集・撮影することも。

そんな「宮田島」の由来ともなっている宮田さんと田島さんをご紹介(いけだいろより抜粋引用)。

宮田さん
信州大学人文学部3年(2019年3月現在)。小学校の頃に蝶への関心を抱く。毎年開催する蝶の個人展は10回を超える。通称「池田の蝶博士」。
 
田島さん
信州大学農学部4年(2019年3月現在)。主に蛾の採集と標本制作に力を入れている。通称「標本の鬼」。
 

今回は3月初旬に行われた取材に同行して人気の理由に迫ります。

池田町某所で行われた取材に同行

今回の取材は、池田町屈指の某絶景スポットにて行われました。どんよりした天気に小雨が混じります。続々と集結するメンバーたち。

今回は「糖蜜採集」で蛾を集める

今回行った「糖蜜採集」では、事前に蛾を誘き寄せるための罠を仕掛けます。夕方に蜜(人工樹液)を設置し、時間を置いて夜に採集する手法。

蜜は宮田さんが事前に調合して持ってきてくれました。材料はビール、酢、黒糖など(うろ覚え)。材料や配分は人によって異なり、誘き寄せたい虫や種類によっても調整するのだとか。

遠くから見ると、完全に不審者です。

田島さん:人口樹液の匂いに釣られてやってくるから、ドバドバかけちゃおう。たくさん染み込んでいた方が、樹液を含ませる紙も風で飛ばされる可能性が少ないしね。樹液の配分はどんな感じ?

宮田さん:アルコールよりは酢が多めです。ビールはプレミアムモ◯ツしかなくて、親にもったいないからあまり入れるなと言われました…。

田島さん:匂いはいい感じかも。アルコールはあまり入れすぎると蛾が早くに酔っ払って、すぐ帰っちゃうから多過ぎも良くない。この辺りの加減は、本当に難しい・・!

この杭良さそう。被せておくか。

田島さん:3月はまだ蛾にも蝶にも微妙な時期です。正直今日の寒さと風の強さでは、あまり期待できないかも。

宮田さん:蝶は15℃超えないと飛ばないけれど、蛾は5℃くらいあれば飛ぶ可能性もあるみたいですね。

田島さん:今なら「キリガ」という種類の蛾が集まるはず。土の中で冬を越して、そろそろ地上に出てくる頃なんです。

夜、撮影&採集スタート!

2時間の夕食タイムをとり、いざ撮影&採集へ。ライトを手に、樹液をかけた木を1本1本丁寧に観察します。

田島さん:あ、いた!!ホソバキリガだ。これは春に生まれる蛾ですよ!もう出ているんだ。テンスジキリガもいるね。こっちは秋に生まれて、越冬している種類です。

暗闇でライトを構えながら撮影。
人口樹液に集まるホソバキリガ(撮影:宮田さん)。
地球外生命体ぽいお顔(撮影:宮田さん)。

標本のために採集も行う

「標本の鬼」の異名を持つ田島さんは、採集も行なっていました。専門器具を駆使して何種類かの蛾を丁寧に持ち帰ります。

暗闇の中、手際よく採集されていく蛾たち。

田島さんの標本に対する想いは、いけだいろのバックナンバーでも垣間見ることができました。

田島:僕はあるとき、生き物を標本で残すことの大切さを知り「標本の鬼」になったんだ。生き物を知り伝えていく上で標本はすごく大事だから。みんなにも一度、見て欲しいなあ。

「いけだいろ6号」読者置いてけぼりで蝶と蛾について語る より引用

蛾って、意外とかわいい。

「蛾って、よく見るとかわいいんだなあ」そんなことを思わせてくれたミツボシキリガをピックアップしてご紹介します。

ミツホシキリガ(撮影:宮田さん)。

3つの斑点が特徴。翅(はね)の模様がミッキーマ◯スに見えることから、ミッキーとも呼ばれているそうです。かわいい。

真正面から。ぱっちり黒目にキュッと上がった眉毛(に見える何か)がキュート。よく見ると、蛾ってフワフワしている子も多いんだなあという発見。

宮田島イチオシ写真をご紹介

せっかくなのでこれまで撮影した中でイチオシの写真を紹介してもらいました。

「白馬村のギフチョウ」撮影:宮田さん
宮田さん
白馬村で撮ったギフチョウです。この写真を選んだ理由はいくつかありますが、まずはギフチョウがもっとも好きな蝶のひとつであること。また白馬らしい風景を背景に入れて撮影できたこと。あと雰囲気や写真の色合いがスキマ映え(?)しそうだなと感じたためです!
 
「ハナモモとオオミズアオ」撮影:田島さん
田島さん
オオミズアオの春型の濃い緑色とハナモモの紅色が映えて滅多に見ない素晴らしい構図だと思いました。また、この構図を友達と徹夜近く撮影し続けたのも良い思い出です。
 

身近な自然が消えつつある問題にも焦点を当てたい

ーー今日はありがとうございました!全く知らなかった蛾の採集方法から、意外とかわいい素顔まで見られて大満足です。今後の宮田島でやってみたい企画はありますか?

田島さん:今までは蝶や蛾の面白さを知ってもらうために楽しそうな企画が多かったんですけど、今後はちょっとシリアスな問題も取り上げていきたいですね。身近な自然が年々消えつつある現実、今まで普通に見られた虫たちもどんどん絶滅危機に陥っている。そういった身近な課題について、みなさんにも知ってほしいと思っています。

宮田さん:田島さんもおっしゃっていたように、今後は池田町の自然環境のネガティブな変化に焦点を当ててみたいです。単に政治的メッセージを投げかけるのではなく、あくまでも自然を観る者としての目を忘れずに、といったところです。減っている蝶や蛾について、環境の変化における蝶や蛾の種数の減少について。などなど。

宮田さん:あと、集落×蛾もやってみたいです。池田町の限界集落・広津など、灯火に良さそうなところを探して、ぜひ山奥で。

ーー山奥の集落で蛾の採集と撮影、最高に尖ってますね!ぜひスキマにも寄稿してください。

池田町や安曇野エリアの自然を発信する「宮田島」を通じて、池田町の魅力や自然環境について再認識してほしいと語ってくれました。今後の活動にも注目していきたいです。

今回取材した様子はいけだいろ最新号の17号にも掲載予定。お楽しみに!

5年目を迎えた「Maple Tree」それぞれの道を進む彼らのこれから

打ち合わせ中のメイプルツリーメンバーたち。

「宮田島」の企画を終え、メイプルツリーの代表・伊藤さんに今後の活動や展望について改めて伺いました。

ーーメイプルツリーも5年目を迎え、大学生だったメンバーもそれぞれの道を歩み出しました。これからの1年、5年後について、何か展望などあれば聞かせてください。

母校の後輩からインタビューを受けるメンバーたち。

伊藤さん:これからの1年ですが、コアメンバーの進学・卒業などに伴って、まずは発行部数を減らすことを検討しています。その代わりページ数を増やし、今まで以上に内容の濃い「いけだいろ」をお届けしたいです。

伊藤さん:5年後はまだ具体的に考えられませんが、10年続くフリーペーパーもなかなか珍しいので続けていきたいとは思っていますね。

ーーメンバーの入れ替わりはあるものの、メイプルツリーの代表はこれからも続けていきたいと考えていますか?

伊藤さん:いや逆に、代表もメンバーもどんどん代わって、たくさんの人に関わってもらいたいと思っています。メイプルツリーやいけだいろはなくならないけれど、ぼくら初期メンバーはほとんど関わらない状態になることが理想かなあ。

ーーおお、意外ですね。そのためには新規メンバーを募集したり、体制を整えたり、何か対策をしていらっしゃるんですか?

伊藤さん:今はぼくがデザイン・執筆しているページが多いので、その状況を脱するのが第一歩かな。もちろん新規メンバーも募集しているし、外部のライターさんや寄稿者も大歓迎ですよ。

ーーいけだいろで書いてみたい!という方はメイプルツリーまでお問合せくださいね。

より金銭的に自立した活動を

伊藤さん:それから、大きく変わるのは金銭面です。これまでいけだいろは県や市町村の補助金などを使って発行をしてきました。今年は補助金を一切使わない初めての年になります。そういった意味で、今後はより金銭的に自立した活動に繋げることが目標です。

ーー具体的に、どのような工面をしていますか?

伊藤さんいけだいろサポーターを募集しています。サポーターの皆様には毎号ご自宅まで郵送にてお届けします。

ーーSkima信州も今月からサポーターになりました!取材に来てもらえるコースもあるとのこと。サポーターについての詳細は最後に記載しておきます。

リアルの場を作る。

ーー最後にメイプルツリーの、フリーペーパー以外での活動についての展望を聞かせてください。

伊藤さん:フリーペーパーの企画をきっかけにして、リアルの場とつながりを作りたいですね。例えば実際に宮田くんや田島くんのガイドを聴きながら池田の自然を観てまわる「宮田島のガイド付きウォーキングツアー」を開催したいと考えています。

伊藤さん:あとは、宮田島の企画が連載10回を超え、そこそこページ数も増えてきました。池田町をはじめとする安曇野エリアの自然状況がだいぶアーカイブ化されてきたので、まとめて本にして販売したいとも考えています。

ーー安曇野エリアの自然図鑑ですか!興味があります。地域のアーカイブ化を続けている点において、Skima信州の活動にも通じるところがあって参考になりました。ありがとうございました!

これからの「Maple Tree」を乞うご期待

他者への想像力を働かせるメディア

5年目を迎えたいけだいろを、メンバーたちはそう表現していました。知るキッカケと考える機会をつくった先には、他者への理解や想像力があります。「知らない」ことは「怖いもの」「嫌なもの」と一方的に排除しようとするのが人間の心理。日常に潜むちょっとした垣根を取っ払い、他者への想像力を働かせることで理解し合えるものがあります。

信州のスキマ・池田町から大きなテーマを小さな視点で発信し続けるメイプルツリーの今後に乞うご期待ください!

いけだいろではサポーターを募集しています

いけだいろでは、広告掲載も可能なサポーターを募集しています。毎号郵送にてお届け。

詳細はいけだいろ紙面、またはメール(ikeda.mapletree@gmail.com )にて!

 コース①コース②
個人サポーター3,000円コース6,000円コース
企業サポーター10,000円コース20,000円コース

※サポーター費は年額。

↓ちなみに今月号にはSkima信州の広告も掲載予定。どこにあるか、探してみてくださいね。

取材・写真協力:Maple Treeメンバー

ありがとうございました!

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この記事を書いた人

Skima信州編集部

Skima信州は「信州のスキマを好きで埋める」をキャッチコピーに長野県のニッチな観光スポットや情報をお届けするローカルWEBメディアです。