深い雪に覆われた峰の原高原(須坂市)の森。
ここにはかつて、鎌倉時代から続く古道「大笹(おおざさ)街道」が通っていました。
あまりに過酷な道のり故に、馬も人も命を落とすことすらあったそうです。

今回はそんな冬の「大笹街道」を身体で感じる観光ツアーを企画してみました。Skima信州も企画進行に携わった本ツアーは、来年以降に販売も予定しています。
題して冬の大笹街道「雪道サバイバルツアー」!
参加者兼ライターのKAKUさんに、その様子を体験レポとして書いていただきました。
標高1,500mの豪雪地帯「峰の原高原(須坂市)」とは?

峰の原高原は北アルプス、北信五岳を望む標高1,500mに広がる高原地帯。
菅平スキー場にほど近く周辺にはペンションが30軒以上点在しています。空に近いこの場所は、天気の良い夕どきには雲海が広がり、真冬の澄み切った星空を眺めるにはもってこい。東京からは車で約3時間、北陸新幹線を使うと東京駅から最寄りの上田駅まで1時間半。
また平地に比べて酸素の少ない高地ならではの環境を利用して、箱根駅伝の出場チームなど陸上競技のトレーニングが盛んに行われています。
▼スノーシューで大笹街道を歩いた記事はこちらもチェック!
鎌倉時代から続く古道「大笹街道」を“かんじき”で歩く

「大笹街道」は善光寺から群馬県をつなぐ、北国街道のバイパスとして拓かれました。福島宿を起点に仁礼(にれい)宿、鳥居峠を越え、群馬県の大笹関所に至る脇街道で、明治期に鉄道や新たな道が整備されるまでは北信から江戸へ荷物を運ぶ人々で賑わったそうです。もちろん舗装もされていなければ、車なんてもってのほか…。
大笹街道の中でも一番標高の高い峰の原エリアを、昔ながらの「かんじき」を履いて当時の人々の気持ちになって歩いてみようじゃないか!というのがこのツアーの醍醐味です。

かんじきは、ゆきわ・わかんじきとも呼ばれます。
その歴史は古く縄文時代の遺跡からも出土しています。足よりひとまわり大きな輪っかの部分が体重を分散させるので、深い雪にズボッ!とハマることはありません。

現代では西洋かんじき「スノーシュー」も用いられていますが、前後に長い流線型でちょっと重たく感じます。
慣れないうちは踵の方から雪に刺さってしまうと抜け出すのが大変でした。一方かんじきは竹や木を使った天然の素材が使われており(プラスチックやアルミ製もあります)とっても軽量!コンパクトに作られているのでとっても取り回しがしやすいです。

また接地面にはスパイクのような突起がついており、雪にしっかり食い込みます。紐でくくりつけて2.3歩、歩いてみると本当に雪の上を浮いているように自在に歩き回れるではありませんか。かんじきをあみだした昔の人、すごいなと心底感心させられます。

ちなみに大笹街道一帯では通年、大きな葉っぱが特徴的な「クマ笹」が生い茂っており、通常であれば整備された道以外歩くことができないのですが、この時期は真っ白な雪の布団が分厚く覆い被さっているので、森の中をどこでも歩けてしまいます。
この地でペンションを開いて早40年になる古川さんの案内のもと、道じゃない所も歩き回ったりしてみました。


スノーウェアには美しい雪の結晶がたくさんまとわり付いてくるのですが、その一つひとつに個性があります。一期一会の出会いと別れを繰り返す結晶は、時々太陽の光が差し込むとキラキラして宝石のようでした。氷点下-10度近くまで冷え込む道中なので溶けずにサッとはらいのけることができます。


雪の合間から少し顔を覗かせたクマ笹の葉を集めてまわり、その場で煮出してみました!
淡い黄緑色からは想像できない濃ゆいお茶のできあがりです。冷気にさらされた喉の奥まで染み渡る、引き締まったお味でした。


古道歩きのあとはスノーラウンジつくり体験

冬の大笹街道を満喫した後は、開放感あふれる雪原で「スノーラウンジ」作りです。
ノコギリとスコップを使って雪のブロックを切り出しては積み上げ、テーブルや雪壁をメンバーで協力し合いながら形にしていきます。

ずっしりとした雪の重みがダイレクトに腰に伝わります。
だんだんとそれらしい空間が出来上がっていく過程がとても楽しい!


スノーラウンジの完成とともに、出来立てのお汁粉と野沢菜をいただきます。笹の葉茶に続いて体がぽかぽか。あちこちから「あったかい〜」「ほっとする」といった声が飛び交っていました。
雪上スナック体験!雪のラウンジで乾杯しよう


今回は須坂市にある「楠ワイナリー」の楠R(クスノキアール)2019年の赤ワインをいただきました。
黒ブドウ品種3種類を約1年かけて熟成されたワインはやさしい味が口いっぱいに広がり、とても飲みやすかったです。雨が少なく、水はけの良い長野県はワインブドウの栽培が盛んに行われています。


だんだんと日が暮れて、辺りが薄暗くなってきました。
色鮮やかなカクテルが白銀のテーブルで際立ちますね。水に触れると発光する「アイスライトキューブ」をグラスに入れるとちょっぴりロマンチックな雰囲気に..。

パウダースノーに触れた経験が少ない私は、子供のようにはしゃぎたい気持ちを抑えながら雪を満喫していました。
宿泊はペンション「スタートライン」!絶品コース料理を堪能

1日たっぷり体を動かし疲れた体を癒してくれるお宿は、峰の原高原の老舗ペンション「スタートライン」。
かんじき体験でガイドをしてくださった古川さんご家族が運営しています。扉を開けると薪ストーブのほんわかした木の温もりが身体全体を包み込んでくれます。


お風呂に浸かり身体の芯まで温まったあとは、地元で獲れた食材をふんだんに使った創作料理がお出迎え。信州サーモンや須坂で育った新鮮な野菜が彩り豊かに盛り付けられていました。
この日は消灯時間ギリギリまで、ツアーメンバー達とストーブを囲みながら今日1日をのんびりと振り返りました。お部屋は洋室と和室どちらもあるので、ご希望ある方は予め伝えておくと良いかもしれません。
ペンション スタートライン
所在地:須坂市大字仁礼3153-885
公式HP:https://oldriver4.wixsite.com/startline
峰の原高原のグルメと自然をめぐるツアー
2日目は峰の原高原で作られる生ハムと雪景色を巡ります!

2番通りでMinenohara Crafts(ミネノハラ クラフツ)を運営し、地域おこし協力隊を勤めている野沢さん宅へ。自身の手作りで仕込み中の生ハム工房を案内していただきました。
野沢さんは峰の原の高原特有の気候と空きペンションを活かして特産品を作れないだろうかと思案。本場イタリア産の生ハムも似た気候で作られており、近年国内でも生ハム工房が増えているそうです。
この日の外気温は-5度から-10度ですが、熟成に使用されるお部屋は半地下になっており常に0度近くをキープ!生ハム作りには最適だそう。


今回はその場で生ハムの原木をスライス・試食させていただきました。
自然の力だけで熟成された生ハム本来の風味は絶品!
野沢さんの生ハム工房では上田市の養豚場から直接仕入れたブランド豚「信州太郎ポーク」を使っています。今の時期に仕込みはじめて早ければ今年の秋には出来上がるそうです。
この日も野沢さんは「午後から豚肉の仕入れに行きます」と意気込んでおられました。
Minenohara Crafts(ミネノハラ クラフツ)
所在地:須坂市大字仁礼3153-577
ジビエ鍋と竹筒ごはんで〆ランチ

午後になり、雪上サバイバルツアーもいよいよ大詰めです。旅の締めくくりはペンション・スタートラインに戻ってお庭で昼食作り!
みんなで手分けしてレンガを並べ、薪を割って火を起こすところからスタート。炭火はこの寒さでもしっかり炎を巻き上げすぐに沸騰。地元産のイノシシ肉と野菜を大鍋に放り込みます。と同時になんとお米を竹筒で炊くというサバイバルっぷり!


寒さよりむしろ痛み?に近い雪の中でいただくお鍋はやっぱり美味い!
イノシシ肉は臭みもなく豚肉と比べてビタミンB12は約3倍、鉄分は4倍と栄養満点!まろやかでコクのある出汁の溶け込んだスープは、間違いなく寒さに耐えるエネルギー源になってくれそうです。


炭火で炊き上げた竹筒ごはんはやはり、その香りが味の決め手でした。
炊飯器では到底再現できないオーガニックテイストで、サバイバルしてるな〜と改めて実感させられます。文明の利器に頼らずに作ったお昼ご飯は、峰の原に集まったツアーメンバー全員だから作ることのできた、この日だけの心のこもった味わいでした。
「雪道サバイバルツアー」まとめ
峰の原高原を舞台に開催された「雪道サバイバル」ツアーの模様をぎゅっと詰め込んでご紹介しました!

普段は決して歩くことのできない雪深い古道を歩く唯一“未知”の体験。
体をたくさん動かすだけではなく、大笹街道に眠る歴史と文化を学びながら過去に生きた人々の想いをリアルに感じ取ることができました。
途中寒すぎてまさに「サバイバル」といった感じでしたが、その分ペンションやご飯の温かさが心身に染み入る体験になったと思います。
スキーやスノボーではなく少し違ったスノーアクティビティ、新たな発見が得られるかも?冬の須坂でこの時期にしかできないレアなスキマ旅、してみませんか?
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