日本人の名字には「田」「本」「野」「山」「川」「森」「林」など、地形や自然に由来する漢字が多くみられる。その中でも、長野県民の名字に特徴的な漢字のひとつが「沢」だ。
「沢」のつく名字は全国的にも少なくないが、圧倒的に長野県に多い。
そこで今回は長野県で「沢」のつく名字ランキングと、その由来をご紹介します。
長野県「沢」のつく名字ランキング1位:宮沢(宮澤)
長野県の名字ランキングで9位にランクインしている「宮沢」さん。
全国順位は321位と決して高くないにもかかわらず、長野県ではポピュラーな名字のひとつだ。件数でいうと長野市、岡谷市、上田市に多く、密度では天龍村、平谷村が多い。
宮は神社、沢は文字通り沢(小川)を意味するため、神社と沢が両方あるような場所がルーツであると考えられる。
長野県「沢」のつく名字ランキング2位:柳沢(柳澤)
長野県の名字ランキングで10位にランクインしている「柳沢」さん。
全国順位は327位。件数でいうと佐久市、長野市、上田市の順に多く、密度でいうと御代田町、長和町、朝日村の順に多い。全国にいる柳沢さんの4割近くが長野県に住んでいる。
柳沢家のルーツのひとつに、武田信玄の家臣の末裔がある。甲斐武田家の一族に青木家があり、柳沢家はさらに分家にあたる。武田氏滅亡後は徳川家康に仕えた。
長野県「沢」のつく名字ランキング3位:滝沢(滝澤・瀧澤)
長野県の名字ランキングで15位にランクインしている「滝沢」さん。
全国順位は295位、全国にいる滝沢さんのうち1/4が長野県に住んでいる。件数でいうと上田市、長野市、千曲市の順に多く、密度でいうと平谷村、筑北村、生坂村の順に多い。
滝沢性の約8割が関東甲信越地区にあり、局地的な名字であり、かつ長野県を中心に分布していると考えられる。
滝沢は地形由来の名字なのでルーツは各所にあるが、長野県内ならば池田町の滝沢をルーツとする滝沢氏が著名。ヌエ退治で有名な清和源氏の源三位頼政の末裔と伝えられている。
上田市原町の滝沢家は原村の出であり、江戸初期に上田に移住している。上田市では旧丸子町や旧武石村に多い。
長野県「沢」のつく名字ランキング4位:西沢(西澤)
長野県の名字ランキングで21位にランクインしている「西沢」さん。
全国順位では363位、全国にいる西沢さんのうち約3割が長野県に集中している。件数でいうと長野市、上田市、大町市の順に多く、密度でいうと信州新町(長野市)、小川村、南相木村の順に多い。
東西南北のつく名字もポピュラーだが、中でも「西」から始まる名字は数が多い。ついで「北沢」もある。
西沢の由来は文字通り「西の方にある沢」。日照時間の長い東向きか南向きに開いた谷間に農地を開いたことから、「西沢」や「北沢」が多いという説が有力だ。「東沢」や「南沢」が少ない理由もそこから推測できる。
長野県「沢」のつく名字ランキング5位:中沢(中澤)
長野県の名字ランキングで22位にランクインしている「中沢」さん。
全国順位では212位、長野県内では南信以外に広く分布している。
ルーツは各地に存在するが、そのうち最も有名なのは中世の名家「信濃中沢氏」だろう。駒ヶ根市(伊那郡中沢郷)をルーツとし、諏訪氏の支流。鎌倉時代には中沢郷の地頭を務めた。
長野県には「沢」のつく名字が多い?まとめ
皆さんの周りにも「沢」のつく名字の人はいるだろうか?
ほかにも長野県の名字ランキングにランクインしている名字では「北沢(27位)」「松沢(45位)」「吉沢(50位)」「小沢(55位)」「藤沢(57位)」「唐沢(62位)」「三沢(87位)」「大沢(99位)」などがある。
100位以内にこれだけ「沢」の入っている名字がランクインするのは、長野県の特徴のひとつだと言える。山地の多い長野県では生活に欠かせない「沢」を生活拠点としていたことがうかがえる。
▼参考文献