「キジも鳴かずば撃たれまい」
ということわざをご存知でしょうか?
口は禍のもと。余計なことを言わなければこんな悲劇を生むことはなかったのに・・長野県にはそんな悲しい民話が残っています。
舞台は長野市の信州新町にある名勝「久米路(くめじ)峡」。長野県歌『信濃の国』にも「心してゆけ久米路橋」とあるように、長野県を代表するスポットです。
今回はそんな「久米路峡」に残る「キジも鳴かずば」の民話をご紹介します。
名勝「久米路峡」とは?
長野市から国道19号沿いに松本方面へ南下する途中にある信州新町エリア。千曲川(信濃川)へと続く犀川にあります。久米路峡の岩はおよそ420万年前の火山活動によりできた凝灰角礫岩でできており、周囲の地層より硬かったことから峡谷になったと考えられています。
犀川中流域の中でももっとも川幅が狭く、昔から水害や氾濫の多い場所でした。現在は近くに水内ダムができたため昔日の面影は薄れたようです。
登録文化財「久米路橋」は何がすごい?
そんな久米路峡にかけられた「久米路橋」は国の登録有形文化財に指定されています。現在の橋は1933(昭和8)年に完成した鉄筋コンクリート造ですが、橋自体は江戸初期より書物に記録が残っています。
当時は水内(みのち)橋として登場しますが、1847(弘化4)年の善光寺大地震での犀川堰き止め水害によって流失したと記録に残っています。江戸時代には「刎橋(はねばし)」という高度な橋梁形式が用いられていました。
ちなみに川からの写真は信州の秘境で「ジャングルクルージング」しませんか?SUP体験は信州新町アウトドアベースで!の時に撮影したもの。かなり迫力のあるSUP体験ができるのでおすすめですよ。
キジも鳴かずば撃たれまいの民話
▼キジも鳴かずば撃たれまいのお話
犀川という川のほとりに、小さな村があった。この川は毎年秋の大雨になると氾濫し、村人を困らせていた。この村に弥平という父親とお千代という娘が二人で暮らしていた。お千代の母親も先の洪水で亡くなってしまっていた。
ある年の秋、お千代は重い病にかかるが、貧乏な家なので医者も呼ぶことができない。お千代はかつて一度だけたべたことのあるあずきまんまが食べたいと言う。小豆を買うお金のない弥平は、地主の倉から米と小豆を盗んで、お千代に食べさせてやった。その甲斐あってか、お千代はすっかり良くなった。お千代は父親が畑仕事に出かけているあいだに、手まり歌で「あずきまんまたべた」と歌ってしまう。
その夜からまた雨が激しくなり、村人たちは咎人を人柱にしようと相談しあった。そこでお千代の手まり歌を聞いた者が、弥平が地主の倉から盗みを働いたことを話すと、弥平は役人にひったてられて、人柱として川のほとりに埋められてしまった。お千代は何日も何日も泣き続けたが、ある日ぴたりと泣きやみ、それ以後一言も口を聞かなくなってしまった。
それから何年もの年月が流れた。猟師がキジの鳴く声を聞いて鉄砲で撃ち落とした。キジの落ちたところに向かうとお千代がキジを抱いており、「雉よ、おまえも鳴かなければ撃たれないですんだものを」とつぶやく。お千代は自分が手まり歌を歌ったばっかりに父親を殺されてしまったことをキジに重ねてそう言ったのだ。それ以後、お千代の姿を見た者はいない。
(まんが日本昔ばなしのデータベースより)
石川県にも同じような民話「あずきまんま」のお話が残っています。お千代ではなく「お菊」のパターンもあります。ただ「まんが日本昔ばなし」でアニメ化されたお話は長野県のものが採用されています。また水害による人柱の伝説も全国各地で見られますね。
悲しい水害の歴史を民話で学ぶ「久米路橋」まとめ
長野県の名勝「久米路峡」に伝わる哀しい民話をご紹介しました。人柱を立てなければならないほどの水害に悩まされ、病気の子どもにご飯すら食べさせられない当時の状況を思うと切なくなります。
SUPができるほど平和になった久米路峡と犀川を観光するなら久米路公園へ。細い階段を上ると、わずかなスキマから久米路峡を見下ろすことができました。
四季折々の景色が美しい久米路峡。一度ぜひ足を運んでみてくださいね。
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