開業100周年!別所線と塩田平の歴史を味わうまち歩き

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こんにちは!まち歩きライターのむーさんです。

上田市を走る上田電鉄別所線(以下、別所線)は、2021年で開業100周年を迎えました。台風被害から約1年半ぶりの全線運転再開など、2021年は別所線にとって節目の1年となりました。そんな別所線の気になるスポットを、フリーきっぷを活用しながら巡っていきます。

別所線はどんな路線?

上田市別所線
「まるまどりーむ号Mimaki」

別所線は、上田駅と別所温泉駅の間を30分ほどで結ぶ路線です。上田市中心部と、その南西に広がる塩田地区をつなぐ地域住民の足であるとともに、別所温泉や生島足島神社といった観光スポットへのアクセス路線という性格も持ちます。

1921(大正10)年に現在の別所線の元となる路線が開業し、2021年でちょうど100周年。赤基調のラッピングがなされた「さなだどりーむ号」には、開業100周年記念のヘッドマークが掲出されています。

上田市別所線
「さなだどりーむ号」には開業100周年記念のヘッドマークを掲出

今回は、別所線の「1日まるまるフリーきっぷ」を使って別所線を巡っていきたいと思います。別所線全線が1日乗り降り自由で1,180円。上田〜別所温泉間の往復運賃と同額なので、少しでも途中下車をする場合にはお得になる切符です。

上田市別所線
別所線の「1日まるまるフリーきっぷ」

上田のシンボル、千曲川橋梁(上田駅~城下駅間)

別所線は、朝夕ラッシュ時を除いて概ね1時間に1本程度の運行。上田駅を発車する電車まで少し時間があったので、この間に別所線のシンボルともいえる“赤い鉄橋”こと千曲川橋梁を見に行きます。

鉄橋までは上田駅から徒歩5分ほどで行くことができます。

上田市別所線
千曲川橋梁

2019年10月の台風被害で鉄橋の一部が崩落。その後約1年半にわたる部分運休・バス代行輸送(上田駅〜城下駅間)を経て、2021年3月28日に全線での運行を再開しました。

上田市別所線
バス代行輸送時の上田駅 (2020年11月撮影)

鉄道施設の被災から復旧できずに廃止されていく路線もあるなかでの別所線の運行再開、そして再開当日の現地やSNS上での盛り上がりは、別所線がいかに上田市民に密接した存在であるかを感じさせる出来事でした。

運行再開から半年以上が経った現在でも、鉄橋の周囲にはその姿を撮影している方々の姿も見られます。

別所線は通学の足!大学前駅

別所線の車内では、大学生の姿も多く見かけます。それは、途中に大学前駅があるためです。

上田駅から7駅目の大学前駅は、長野大学と上田女子短期大学の最寄り駅となっており、これらの大学に通う学生の乗降が多い駅です。また、駅周辺には学生向けアパートも数多く建っており、他の駅とは駅前の雰囲気が少し異なります。

上田市別所線

別所線の走る塩田平は古くから「信州の学海」と呼ばれており、安楽寺や前山寺といった地域の由緒ある寺院へ、学問・宗教を志す者が集まる土地だったのだそうです。

そうした流れも汲んでか、現在の長野大学(開設当初は本州大学)も地元自治体の出資による「公設民営大学」の先駆けとして開設されました。※2017(平成29)年4月より公立大学法人へ移行。

大学前駅にも、「信州の学海」の歴史を紹介するプレートが設置されています。

上田市別所線

ちなみに、別所線では上田女子短期大学の学生さんによるガイドボランティアが実施されています。土休日を中心に一部の電車にガイドとして乗車されるそうです。こちらもぜひチェックしてみてください。

上田市別所線

塩田平の歴史に触れる 塩田町駅

大学前駅から別所温泉方面へ3駅。次は塩田町駅で下車します。

上田市別所線の塩田町駅

塩田平周辺の地図を眺めていると、池がたくさんあることに気付きます。これらは自然の池ではなく、農業用のため池です。

山々に囲まれた盆地である上田は晴天率が高く、全国でも有数の少雨乾燥地帯であるため、干ばつなどの被害に苦しんできました。そのため、ため池を造ることによって稲作に使える水を増やし、農業を発展させてきました。

塩田平には約40のため池があり、農林水産省の田園空間博物館のひとつとしても指定されています。現在も水田が一面に広がるのどかな風景を眺めながら、先人たちの苦労に触れることができます。

上田市別所線の上窪池
上窪池
上田市別所線の上窪池
「田園空間博物館」として説明のプレートが立てられている

2020年6月には、塩田平一帯が日本遺産「レイラインがつなぐ『太陽と大地の聖地』~龍と生きるまち 信州上田・塩田平~」として認定を受けました。

これは特定の施設ではなく、文化財や気候風土に関連した地域のストーリーに対して遺産としての認定を行うもので、実は別所線自体も日本遺産の構成文化財のひとつとされています。有形・無形を問わず35の要素が構成文化財として指定されています。

▼上田市の日本遺産についてはこちら!

今回はそのひとつである泥宮を見てきました。

上記の上窪池のほとりにある小さな神社ですが、非常に古い歴史を持っています。そして泥宮の御神体は泥、すなわち稲作を行う塩田平の土地そのものです。ため池を含め、この土地にとって水や土がいかに貴重なものであったかを感じさせるものの一つです。

上田市別所線の泥宮
上田市別所線の泥宮

上窪池や泥宮のある場所からさらに南下していくと、「信州の鎌倉」と呼ばれる、由緒ある寺院の続くエリアがあります。この先は全国「遊歩百選」に認定されたウォーキングコースとして整備されていますが、全長約10km、所要時間5~6時間ということで今回は割愛。

例年4月から11月の間は別所線の下之郷駅と「信州の鎌倉」エリアを結ぶバス路線、信州上田レイライン線が運行されますので、そちらの利用もオススメです。また同期間には、別所線のフリーきっぷもセットになった別所線・信州上田レイライン線電車・バスフリーきっぷも発売されます。

上田市別所線の泥宮

時間があれば立ち寄りたい、無言館

別所線から少し距離は離れますが、どうしても立ち寄りたい場所として、戦没画学生慰霊美術館「無言館」に足を運びました。戦死した画学生たちの作品が、それぞれの家族や友人とのエピソード、写真や手紙とともに展示されています。戦争の悲惨さを直接的に伝えるというよりは、各画学生個人の紹介に多くが割かれていることによって、逆にその無念さがひしひしと伝わってきます。

塩田町駅からは徒歩30分、しかも小高い丘の上にあるので徒歩で足を運ぶには少し体力がいりますが、時間に余裕があれば是非立ち寄ってみていただきたい場所です。

上田市別所線の無言館
無言館
上田市別所線の無言館
無言館第二展示館「傷ついた画布のドーム」

無言館

所在地:長野県上田市古安曽字山王山3462
アクセス:別所線塩田町駅から徒歩30分、または下之郷駅からバス(4~11月のみ)
開館時間:9:00~17:00(30分前までには入場を)
休館日:火曜日(祝日の場合は開館)
鑑賞料:一般 1,000円/高・大学生 800円/小・中学生 100円
URL:https://mugonkan.jp/

日帰りも宿泊も!別所温泉駅

無言館でじっくり展示を見ていたら日が暮れてきてしまいましたが、やっと終点の別所温泉駅に到着です。温泉宿のチェックインの時間帯ということもあり、駅には宿泊客を出迎える送迎バスも待ち構えています。

別所温泉駅の特徴は、味のある駅舎です。駅の窓口業務は別所温泉観光協会に業務委託されており、駅員のいる時間帯は袴姿の観光駅長が迎えてくれます。

上田市別所線の別所温泉駅
上田市別所線の別所温泉駅

別所温泉駅から別所温泉の中心部までは少し離れており、700mほど坂を上がっていくことになります。北向観音や安楽寺、常楽寺といった名所へも、同じ方向へ進んでいきます。

北向観音まで上がってくると、上田の街を見下ろすことができます。別所線自体は全長11kmほどの短い路線ですが、なかなか遠くまで来たような感覚を味わえます。

上田市別所線の北向観音
北向観音
上田市別所線

このまま別所温泉のお宿に宿泊…というのも良いですが、今回は日帰り旅ということで、外湯に立ち寄って上田駅へと戻ることにしましょう。

別所温泉には「大湯」「石湯」「大師湯」の3ヶ所の外湯があります。今回立ち寄ったのは「大湯」。入浴料はなんと150円…!しかも露天風呂もあります。日帰りでも気軽に温泉を楽しむことができるのは、なんともありがたい限りです。

▼別所温泉 共同浴場|「信州の鎌倉」で3つの外湯をめぐる日帰り旅

大湯

所在地:長野県上田市別所温泉215-1
営業時間:6:00~22:00
定休日:第1・3水曜日
入浴料:150円(未就学児は無料)
URL:https://www.besshoonsen-zaisanku.com/bath/
備考:ドライヤーは設置されていません。

上田市別所線

夜の駅舎も美しい 八木沢駅

温泉を満喫して、別所温泉駅に戻ってきました。すっかり日が落ちて寒くなりましたが、夜の駅舎も暖かみがあって落ち着きます。そのまま上田駅まで戻っても良いのですが、あと1駅だけ途中下車します。

上田市別所線の別所温泉駅

最後の途中下車駅に選んだのは別所温泉駅のお隣、八木沢駅。別所線にはレトロな駅舎がいくつか残っており、八木沢駅もそのひとつです。暗闇の広がる塩田平に佇む駅舎と、頭上に広がる星空を楽しめる、至福の時間でした。

上田市別所線の別所温泉駅

これにて今回の別所線まち歩きは終了。短い路線ではありますが、一つひとつの駅をじっくり楽しむと、1日では足りないくらいでした。今回立ち寄れなかった生島足島神社や、上田駅周辺などもぜひ歩いていただきたい場所です。

塩田平の歴史に触れられる別所線の旅、ぜひ一度足を運んでみてください!

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この記事を書いた人

むーさん

茨城県出身。都内の旅行会社勤務を経て、2020年夏から長野県民。善光寺近くのゲストハウスで働いています。ニッチな街歩きを極めていたら、なぜかNHKからオファーがきました(NHK長野『ブラナガノ』む〜隊長)