佐久市望月支所の裏側に、佐久市立天来記念館があります。
「書聖」「現代書道の父」とまで謳われた望月出身の比田井 天来(ひだい てんらい)先生を記念して1975(昭和50)年に開館しました。
今回はそんな比田井天来先生について紹介します。展示内容と記念館で購入した書籍『現代書道の父 比田井天来』を参考にまとめました!
比田井天来とは?
名主の家に生まれる
比田井天来は1872(明治5)年、長野県協和村片倉(現在の佐久市協和)に生まれました。生家は江戸時代より長く名主を勤めた名家。醤油の製造を家業とし、天来の少年時代には製糸業を営んでいました。
子どもの頃から日本の名品を手本にして紙の両面が真っ黒になるまで練習をして、ついには畳が腐ってしまうほどだったそうです。
上京し、日下部鳴鶴に入門
26歳の時に親戚に連れられて訪れた貞祥寺(佐久市)で住職に偶然書の才能を見込まれ、上京を勧められました。住職は数日後に天来の生家を訪れ、再度上京を後押ししました。天来はその年の5月に上京します。
やがて書道家の日下部 鳴鶴(くさかべ めいかく)に入門し、29歳の時に幼名の常太郎から鴻(こう)と改名します。
妻「小琴」と結婚
1904(明治34)年、天来が30歳の時に17歳の元子と結婚します。元子はかつて上京していた時に泊まっていた日本橋蛎殻町(かきがらちょう)にあった小さな旅館の一人娘です。天来を「お兄様」よ呼んでいた元子は、天来の妻になるために有名な国文学者の阪 正臣(ばん まさおみ)の内弟子になって和歌と書道の勉強に勤しんだといいます。
天来は元子に「小琴(しょうきん)」という雅号を贈ります。
天来と小琴の間には男の子が4人、女の子が3人生まれました。小琴は書の勉強と子育てに追われて大忙しだったそうです。
新たな筆法(俯仰法)発見

天来が「現代書道の父」と呼ばれる所以のひとつに、新たな筆法の発見があります。それまでは中国から伝わった廻腕法(かいわんほう)という技法を使っていました。腕を大きく廻し、肘から先をほぼ水平に半月の形にして運筆する方法です。

1916(大正5)年から2年余りの研究を経て、筆の進む方向に筆の軸を倒して書く俯仰法(ふぎょうほう)を発見します。古典はこの筆法で書かれたと考え「古法(こほう)」とも呼びました。
比田井天来記念館へ

1975年開館、佐久市旧望月町出身の書道家 比田井天来・小琴の書業を展示するために建てられた美術館。天来・小琴とその弟子たちの書が展示されています。博物館法が適用された初の書道専門美術館です。
比田井天来記念館
所在地:長野県佐久市望月305番地2
開館時間:午前9時〜午後4時
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日(土曜・日曜・祝日にあたる場合は開館)、年末年始(12月29日〜1月3日)
入館料:一般300円 高校生250円 小中学生150円
▼佐久市立天来記念館の詳細はこちら
天来先生の書が見られる場所
佐久市望月には、天来先生の書を実際に楽しめる石碑がいくつかあります。今回は2つご紹介します。
▼聖徳皇太子石標

鹿曲(かくま)川のほとり、西宮神社の手前にたつ「聖徳皇太子石標」。1914(大正3)年3月、天来43歳の書です。
▼大伴神社社標

旧望月宿の中心地に鎮座する大伴神社の社標。1930(昭和5)年、天来59歳の書です。
まとめ|書聖「比田井天来」とは?

佐久市出身の書聖「比田井天来」についてご紹介しました。
今ではみんな当たり前に習う書道の書き方を発明した、まさしく「現代書道の父」。
書道を嗜む方がよく見学に訪れるそうですよ。皆さんもぜひ足を運んでみてくださいね。
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