長野市の秘境、鬼無里。鬼無里には伝説と文化があります。おいしいおそばにおやき、ダムカレーもあります。
神社はいっぱいだし日陰は涼しいし、草はすぐに伸びます。そんな鬼無里の魅力をみなさんに伝えるべく、1日でめぐれる観光プランを考えました。今回は鬼無里の「紅葉伝説」にスポットを当て、実際に行ってみたくなるようなプランを提案します!
▼鬼無里のスキマ記事はこちら
鬼無里ってどんなところ?
鬼無里は2005年に長野市と合併しましたが、その前は「鬼無里村」と呼ばれていました。
多くの伝説と神社・遺跡が残り、最近では長野市から白馬に抜けるツーリングコースとしても親しまれています。同じ長野市でも善光寺側からは車で40分ほどかかり、アクセスも悪いように感じます。
しかし安曇地方(現在の白馬あたり)との交通の便が良く、昔は栄えた地域だったのです。「遷都伝説」にもあるように、昔は都をこの鬼無里に移そうという計画があったほど。
鬼無里はこのへん
確かに長野市街地より白馬村あたりへ抜ける方が近そう。同じく長野市の戸隠地域とのアクセスも良く、歴史的にも交流も盛んだったと考えられています。
貴女紅葉ってどんな人?
鬼無里に伝わる「紅葉伝説」は、謡曲「紅葉狩り」のモデルになった紅葉という平安時代の女性が主人公です。何回か説明しているのでかなりざっくり説明。
昔々、紅葉というきれいで才もある女の子がいた。
上京してすぐに琴の才能を認められ、源経基の正室の侍女になる。
そののち源経基に見初められ、子供を授かる。
しかし正室を呪い殺そうとした罪に問われ、戸隠の山奥(鬼無里)に流されてしまった。
無事に鬼無里で男の子を産んだ紅葉は、京の文化を村人に伝え「貴人」「生き神さま」と敬われるように。
しかし再び上京したいと考えるようになり、それが朝廷に伝わって「紅葉討伐」の命令が下る。
討伐に来た平維茂(たいらのこれもち)と激闘の末、紅葉は33歳でこの世を去る。
京では悪さをして鬼になった「鬼女」だが、鬼無里では変わらず「貴女」として伝えられている。
鬼無里には「紅葉伝説」にちなんだ地名やゆかりの社寺がたくさんあるよ。
美貌と才能に溢れ出世した紅葉は、山流しされ鬼として退治される。しかし鬼無里では今もなお愛され、さまざまな伝説が残っている。
どうですか?単なる悲劇のヒロインでは終わらない、魅力的な女性ですよね。
ちなみに「鬼無里」の地名は紅葉伝説に由来しているという説もありますが、年代を考えると有力ではありません。「鬼無里」は「木の沢」がなまったものであり、その地名からこのような伝説が生まれたのでは?とする文献もありました(参考にした書籍は一番下の項目へ)。
今回の鬼無里伝説めぐりプランのざっくりルート
今回のルートをざっくりご紹介。赤色が伝承の地、黄色が蕎麦やおやきなどグルメ系です。(グルメ系は今回カット)
長野駅→(40分)→柵神社→(ほぼ道向かい)→鬼の塚→(5分)→大昌寺→(約15分)→松嚴寺→(5分)→鬼無里神社→(10分)白髯神社→(7分)春日神社→加茂神社→内裏屋敷跡・月夜の陵
実際に伝承の地を訪ねよう!
では実際に鬼無里を歩いて見たものをご紹介していきます。長野市から行けば近くから順番にまわるルートになっていますよ。すべてまわってお昼や休憩も入れれば5時間ほど、ゆっくりまわれば1日コースです。
鬼無里へ行く前に、戸隠栃原(とちはら)へ寄り道
おとなり戸隠にも鬼無里や紅葉にまつわる伝承は多く存在します。「大昌寺」「柵神社」「鬼の塚」などは鬼無里散策の前後に寄り道したいスポットですが、今回はあくまで鬼無里散策なのでさらっと触れていきますね。戸隠栃原から鬼無里中心部までは、車で15分ほどです。
柵(しがらみ)神社は、平維茂の矢が刺さった神社らしい
柵と書いてしがらみ神社。
平維茂が八幡大神(現鬼無里神社)で矢を射ったところ、この柵神社に落ちたと言い伝えられています。
とりあえずこの階段長すぎました。階段もガタガタで蜘蛛もたくさん。
鬼の塚にも紅葉の墓が
柵神社のほぼ道向かいに位置する鬼の塚へ。
ちなみに「入り口」と書いてある場所からは入れないので、少し道沿いに上って車も入れる大きな道を右に入ります。しばらく進むと大きく開けた空き地に着き、さらに進むと鬼の塚が見えてきます。
手前が鬼の塚。紅葉を討った平維茂が弔ったといわれています。
奥にあるこちらは「遷都伝説」で朝廷から派遣された使者たちの墓だといわれています。しかし紅葉と同じように闘った野党の墓だという説も。
この後お読みいただければわかると思うんですけど、鬼無里に残る遺跡はパラレルワールドのようにふたつの伝説が重なっているのです。これも鬼無里の面白いところ。謎だらけ。
大昌寺は伝説の鬼女紅葉とそれを討伐した平維茂を合祀している
さらに進むと、5分ほどで大昌寺に到着します。こちらでは紅葉と平維茂を合祀していて、中では絵解きなど紅葉にちなんだ絵がいくつか飾られています。
お寺の方に頼むとすぐに見せていただけるので、お参りついでにぜひご覧ください。
大昌寺の駐車場から見た景色。この辺はかなりひらけていますね。詳細は別記事にも紹介しています。
ようやく鬼無里 紅葉の菩提寺 松嚴寺へ
戸隠栃原を抜け、ようやく鬼無里へたどり着きました。まずは私も最初に訪れた松嚴寺(しょうがんじ)さんへ。
貴女 紅葉のお墓があるよ
山門を抜けるとすぐ右手に紅葉のお墓があります。
手前のロウソクは毎日灯しているようですが、4度目の訪問時には消えていました。そういう日もあるよね。
すぐ近くには鬼無里神社
松嚴寺を少し戻って「鬼無里」の信号をまっすぐ進むと、すぐ正面に見えるのが鬼無里神社です。車は神社左の道を上ったところにあるスペースに停めましたが、普通車では少し狭いかもしれません。無理そうな方は松嚴寺さんに断ってそちらの駐車場から歩いていくしかないかも。
かつて湖だったと言われる鬼無里ですが、その湖がなくなった後まるで魚のような姿をした山が現れたことから「魚山」とよばれるようになりました。鬼無里神社はちょうどその頭部に当たります。「紅葉伝説」では、平維茂が紅葉退治のため祈願所にしたと伝えられています。平維茂、いたるところで祈ってますね。
鬼無里神社の額は匠の技
見ていただきたいのが鬼無里神社の扁額(へんがく)。
鬼無里神社は昔「従前諏訪大明神」とよばれており、建御名方神をご祭神としています。この立派な龍はそれにちなんでつくられたものだと考えられます。これをつくったのは北村喜代松という彫刻家で、鬼無里神社などの祭り屋台もデザインしています。精好な匠の技をぜひご覧ください。
白髯(しらひげ)神社
鬼無里神社から車で10分ほど行くと、白髯神社に到着します。ここはホタルも有名で6月下旬〜7月上旬には案内員の方もいらっしゃるとか。(行きたかったのに、ちょうど体調を崩していてパスした)
ご祭神は猿田彦神。最後に参拝したときはちょうど修復工事中でした。
看板には「鬼門の守護神」として創立したと書かれていますが、方角は「生門」にあたるようです。この神社についてもよく掘り下げた本があるので、読んでから訪れるとまた違った感想が持てるはず。ちなみに平維茂はここでも祈っています。木曽義仲も祈ったらしいです。
西京 春日神社へ
白髯神社を後にし、再び406号線沿いを進みます。西京・春日神社が見えてきました。
小さな介護施設の道向かいに鎮座しているのが春日神社。
「西京」「春日神社」は京にゆかりのある名前です。鬼無里ではこのように京と同じ地名が多いのですが、これらは紅葉が京を懐かしんでつけたのだという伝説が残っています。
東京 加茂神社にも
加茂神社は東京(ひがしきょう)にあります。
内裏屋敷跡と月夜の陵
鬼無里散策最後の地、内裏屋敷跡と月夜の陵(おか)に着きました。道向かいに駐車スペースがあります。
月夜の陵まではすごい草道だったんだけど、この前行ったら刈られてた
私がひとりで行った時はこんな感じ。胸のあたりまで草が伸びていました。
「行けるかいっ!」って突っ込みながら、かき分けて進みました。
次にきた時はそれなりに通り安くなっていたので、定期的にしっかり刈っているのがわかって一安心。
山道を5分ほど進むと、月夜の陵が見えてきます。
この山道は案内した同行者いわく「高尾山より登山らしい」そうです。しっかり道として整備されてはいませんので、サンダルなんかで来るのはやめましょうね。
月夜の陵は遷都計画の際訪れた使者の墓だといわれていますが、紅葉の侍女「月夜」の墓であるという説もあります。どちらにしろとても幻想的な名前ですね。厨二ゴコロをくすぐられます。
まとめ
紅葉伝説にゆかりのある場所をまとめてご紹介しましたが、いかがでしたか?
紅葉のお墓、紅葉が名付けた地名、紅葉の過ごした場所。触れてみることで、当時の様子をより鮮明に思い浮かべることができます。
紅葉という女性に魅力を感じた方は、ぜひ鬼無里に行って散策してみてくださいね。次回は鬼無里のおそばやおやき、ふるさと資料館などを紹介する観光プランを紹介させていただきます。
今回参考にした文献たち
今回参考にした文献です。
多くは地元の方々が愛情を込めて作った本ばかりなので、通販などはありません。ぜひ実際に足を運んで、お手にとってご購入くださいませ〜。
松巖寺で購入した本
「信越古道(2,000円)」「秘境の谷 鬼無里の自然(1,500円)」「谷の京物語 伝説の鬼無里(1,500円)」。主に一番右「谷の京物語 伝説の鬼無里」を参考にしました。
「鬼女紅葉伝説の里」
大昌寺にて600円で購入しました。周辺の遺跡を写真付きで紹介しています。
戸隠 豆知識
戸隠の人気蕎麦屋「そばの実」さんで購入しました。700円弱だったかな?戸隠神社や紅葉にまつわる地名など、イラスト付きでていねいに解説しています。あたたかみがあり、数年に一度きちんと改訂もされているようです。
鬼無里への誘い
こちらは先日立ち寄ったおやき屋「いろは堂」さんで購入しました。
私と同じように鬼無里を散策された様子がリアルに書かれていてとても親近感がわきます。
買って1日で読み終えおすすめツイートを連投したほどおすすめ。著者の宮澤先生は、鬼無里の学校で校長先生をされていた方だそうです。どうりでお話が分かりやすい。