宮崎駿監督作品『もののけ姫』に登場するキャラクターのモデルとなった地名が長野県の富士見町にあります。
今回は実際に富士見町を歩きながらモデルとなった地名やその由来について考察。同時に宮崎駿監督の別荘もあった富士見町自体の魅力も感じていただけたらと思います。
ジブリにも何度か登場!富士見町ってどんなところ?
富士見町は長野県の諏訪郡にあります。山梨県との県境でもあり、甲州街道の蔦木宿を有する歴史ある町。八ヶ岳と南アルプスにはさまれた自然豊かなエリアでもあり、文字通り天気の良い日には富士山も望みます。
映画『風立ちぬ』や『千と千尋の神隠し』にも登場
富士見町には『もののけ姫』の他にも舞台となっている映画があります。『風立ちぬ』ではヒロインの菜穂子が療養する「富士見高原療養所」が登場。すでに取り壊されていますが実際に存在し、現在は富士見高原病院と名前と場所を改めています。映画『風立ちぬ』のモデルとなった小説『風立ちぬ』や『菜穂子』を執筆した堀辰雄が実際に療養した場所でもあります。
また『千と千尋の神隠し』冒頭、主人公の千尋が乗る車から富士見町の地名「とちの木」が書かれた標識が描かれていますが、これは実際にある標識と非常によく似ています。舞台の名言はされていませんが、富士見町に引っ越してきたのではないでしょうか?ちなみに富士見町には不思議の国に通じそうなトンネルはありません(多分)。
八ヶ岳と南アルプス、富士見高原の豊かな自然
富士見町の魅力はそのひらけた土地と雄大な原風景。晴天率も高く、東京からのアクセスも良いため観光地としても人気のスポットです。一本桜も多いためスキマでも何度か取材に訪れています。
文化と歴史が交差する町
日本遺産にも登録された約5,000年前の井戸尻遺跡や、甲州街道・蔦木宿など歴史や文化のある富士見町。各所に遺跡や史跡、考古館などがあります。絶景だけではない、こうした魅力が宮崎駿監督のお気に入りとなった所以のひとつかもしれません。
富士見町にある『もののけ姫』ゆかりの地名と由来(推測含む)
富士見町について何となく心得たところで、本題の地名についてご紹介。『もののけ姫』にゆかりのありそうな地名をピックアップしていきます。
烏帽子(えぼし)
たたら場の主にしてものの姫のサンとは敵対関係にあるエボシ御前。富士見町落合にある烏帽子という地名に由来しています。烏帽子の由来はおそらく、この地区にある「烏帽子池」。池の形が烏帽子のように見えることから名付けられたそうです。
甲六(こうろく)
牛飼いでおトキの夫でもある甲六(こうろく)。富士見町には甲六川が流れ、近くには甲六公園があります。山梨県とのちょうど県境を流れています。牛飼いの甲六は、甲六川が由来になっていると監督自身が明言しています。
乙事(おっこと)
中国からエボシを倒すために渡来してきた猪神の乙事主(オッコトヌシ)。宮崎駿監督もこの地名を見て「不思議な地名だな」と思ったのでしょうか。明治時代までは「乙事村」として集落があったとのこと。地名の由来が気になって調べましたが、元は「乙骨(おつこつ)」だったものが転じたそうです。が、では乙骨の由来は何だろうと調べても答えは出てきませんでした。乙骨(おっこつ)氏という苗字もここからきているという説もあるようです。
【番外編】ジコボウは富士見町で採れるキノコの名前
地名ではありませんが、帝に頼まれてシシガミさまの首を狙うジコ坊も富士見町に由来しています。ハナイグチというキノコは、長野県の方言でジコボウと呼ばれ、富士見町周辺でも採れるのだそう。
乙事周辺の観光スポット
そば処 おっこと亭
乙事の信号を少し北に進むとあるそば処「おっこと亭」。100%地元産のそば粉と八ヶ岳山麓から流れる天然水を使用したこだわりのおそばがいただけます。わたしは気づかず普通のお蕎麦を注文しましたが、オススメは木の箱に乗せられたきりだめそばだそうです。
乙事諏訪神社
諏訪明神の神霊を勧請した国宝・乙事諏訪神社。諏訪大社と同じく、周りには御柱も建っています。もともと富士見町や佐久地方のあたりは諏訪氏によって拓かれた地域。諏訪明神との縁も深いものと推測します。
富士見町の地名めぐりをしよう
今回は富士見町をジブリ作品『もののけ姫』の視点からご紹介してみました。もう少し考察して、何かわかれば追記していきたいと思います。その前に一本桜めぐり、蔦木宿など書きたい記事もあるので富士見町の記事は増える予定。お楽しみに!
地名の由来シリーズはこちら!
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