名前は知っているけれど、そもそもの由来や意味は分からない地名ってたくさんありますよね。身近な地名の由来を解説する地名の謎コラムを始めました。
第1回目は「篠ノ井(しののい)」を取り上げます!
篠ノ井(しののい)は長野市の南部にある地名
篠ノ井(しののい)は長野市の南部にあり、かつては「篠ノ井町」や「篠ノ井市」として独立した自治体でした。「篠ノ井」の字が史料に初めて登場したのは鎌倉時代。昭和41年に長野市と合併しています。現在の長野市塩崎と呼ばれるエリアが発祥とされ、昔から水害の多い地域でした。
余談ですが、長野市篠ノ井塩崎には軻良根古(からねこ)神社があり、昔大ネズミと闘った唐猫さまが千曲川で力つき、この辺りに流れ着いた伝説も残っています。蛇行する千曲川がちょうど大きくカーブする地域にあるため、水が切れやすかったのではと推測できます。

「篠ノ井(しののい)」の地名の由来は?
「シノ」は湿地や川辺を表す言葉
漢字ではなく音から読み解いていきます。『万葉集』1831番「朝露に之怒怒(しののに)濡れて呼子鳥三船の山ゆ鳴き渡る見ゆ」の「しののに」は「びっしょり濡れるさま」「ぐっしょりと」「じとじとに」という意味があります。「シノ」には「湿地」という意味もあるとのこと。
楠原佑介『こうして新地名は誕生した!』によると、篠原(しのはら)などの「シノ」は中国地方で「湿地」を意味するそうです。
漢字で見ると「篠」は竹の一種、「ささ」と読むこともあります。細くて群がり生えることから「篠突く雨」とは勢い激しく降る雨を表しました。
「井」は川に近い場所を表す
「井」は「軽井沢」「奈良井川」などと同じように水や川を表すときに使われる漢字です。ちなみに「軽井沢」は「涸れ井沢」に由来しているため、今は水のない場所「涸れ沢」を意味します。
篠ノ井(しののい)は川辺の湿地を意味する地名
以上のことから篠ノ井(しののい)は、川辺の湿地を意味する地名であると考えられます。
実際に篠ノ井周辺を歩いてみたい方は、こんな記事もおすすめ!
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地名の謎をスキになろう!
篠ノ井の意味や由来についてご紹介しました。地名はいつ、誰ともなく名付けられることも多いため、推測や資料不足による誤認もあるかもしれません。もし追加資料があれば、どんどん追記していきたいと思います。これも地名の面白さだと思ってお付き合いくださいね。
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