【2泊3日】上高地〜槍ヶ岳登山レポ!徳本峠を越え、歩いて上高地を通るぜいたくなルートをご紹介。

※当サイトのコンテンツにはプロモーション(広告)が含まれています

今回ご紹介するのは、景色がきれいな稜線歩きはないけれどどこか惹かれる登山道・徳本峠(とくごうとうげ)

上高地に徒歩で行くときに越える峠です。上高地までの車道が開通するずっと前から使われていました。上高地にアクセスするには、一般的にバスなどの公共機関を利用します。しかしあえて今回は遠回り。歴史ある徳本峠ルートを歩きます。

徳本峠を越えた後は、日本で5番目に高く天を突くようにそびえる槍ヶ岳へ。今回は、徳本峠を越えて槍ヶ岳を目指したときのレポです。

上高地の観光スポットを知りたい方はこちらもどうぞ!

徳本峠登山口近くの駐車場は?

徳本峠の登山口やバスターミナル、駐車場などは下のマップをご覧ください。帰りは上高地からバスでここに戻ってくることも可能ですよ。一番近いのは、無料の「島々登山口駐車場」。松本市役所の安曇支所から1kmほど山に入ったところに、数台ほど停められる駐車場があります。

徳本峠はかつて上高地へ向かう道だった。あの有名人も通った歴史ある峠

上高地

上高地は国の特別名勝・特別天然記念物に指定されています。河童橋から仰ぎ見る穂高連峰の雄大さ。梓川沿いに延びる小径の清々しさ。水と緑の美しさ。若者から中高年まで幅広く人気の観光スポットです。

昭和8年に旧釜トンネルが掘られてやっと車でアクセスできるようになりましたが、以前はこの徳本峠を越えるしかありませんでした。ちなみに釜トンネルは、すぐ横にある国の登録有形文化財・釜ヶ渕(堤防)から来ています。

江戸時代は、木材資源を求めた住民や薬草を求める人々、猟師、杣人(そまびと)と呼ばれる林業関係者などが通いました。明治になると猟師の上条嘉門次(かみじょうかもんじ)がイギリス人宣教師のウォルター・ウェストンと共に峠を超え、北アルプスに連れて行きました。

ウォルター・ウェストンは日本の山々を歩きつくし、その魅力を世界に発信した人です。

大正には「智恵子抄」で有名な詩人、高村光太郎も妻・智恵子を連れて峠越えしました。智恵子は空を見てなにか思ったでしょうか。

芥川龍之介もここを歩き「槍ヶ岳紀行」を残しています。

日本山岳会の設立者、小島烏水もここを越えました。

明治18年には上高地牧場が開牧されて、観光客に危害が及ばないようにと昭和9年に廃止されました。ここで放牧された牛馬も、冬越えで里に下りるときに徳本峠を通ったそう。

放牧された牛番の小屋は現在、宿・徳澤園として利用されています。徳本峠は外国人や文人が通った、歴史がつまったルート。谷の底にのびる道の雰囲気の良さ、美しい川の音も聞こえる。そんな素晴らしい峠道です。

1日目は松本駅から電車とバスで登山口まで行き、徳本峠小屋を目指した!

松本駅から電車とバスで1時間。旧安曇村の島々からスタート

【1日目行程】
松本→(公共機関)→島々→(登山道)→二俣、岩魚留小屋→徳本峠小屋

長野県松本市(旧南安曇郡安曇村)の島々谷。徳本峠への入り口は、梓川が削ったこの深い谷の途中にあります。電車とバスを乗り継いで約1時間。「安曇支所前」バス停で下車。

所要時間や距離は目安として書いています。あくまで参考程度にしてくださいね。さて、徳本峠に通じる道はどこだろう。探したら意外と簡単に見つけられました。

徳本峠入り口 上高地へ二〇キロ

現代ではほとんど歩かない距離ですね。気合を入れて臨みます。

最初に90分ほど、この島々谷川に沿って歩きます。写真の奥へ向かうイメージ。

砂防ダムをいくつか通過。

二俣(ふたまた)に到着。トイレが設置されているのでここで済ませておきましょう。ここから先は、いよいよ登山道。徳本峠まで約8km、6時間ほどの行程。

北アルプスの美しい樹林帯をたっぷり味わえるコースです。

森の中に入っていく。

かわった形の木を見つけました。木曽五木でおなじみ、サワラの木。

登山をしているとこのように奇妙な形の木が多くて、目を楽しませてくれます。

徳本峠へと続く谷をどんどん遡っていきます。このあたりの登りはキツくなくて、サクサク歩けます。

木々の間を一本道が分け入ります。山の最深部は3,000m級でも、周りの標高は低く、麓には町があります。町に近い部分は、もう里山。徳本峠へと通じるこの道は、里山と北アルプスを繋げている。いきなり上高地に降り立ってもいいけど、時間をかけてアルプスに入っていける。これも徳本峠の魅力だなと感じました!

谷底を流れる川。水の近くの緑はひときわ美しい!いろいろな緑色が見られるのは癒し。ちなみに個人的見解ですが、谷は寒暖差が激しいため紅葉の色づきがよいです。良い紅葉を見るには、谷に行きましょう。

途中、この道標とベンチがあります。ここは先ほどの二俣と岩魚留(いわなどめ)小屋との中間地点。「これより先に岩魚は遡上できない」ことから名付けられました。

写真協力:中村氏

ここは両側の壁が迫っていて、印象的なポイント。桟橋や川近くを歩きながら、峠を目指します。途中、岩魚留小屋を通過。残念ながらこのあと悪天候に見舞われ、写真を撮る余裕がありませんでした。峠の1km手前で道は斜度を増し、熊笹の中つづら折りをひたすら登ります。休憩をはさまないとキツイ。牛馬はよくここを通ったなあ。

峠が近くにつれて気持ちが高まっていきます。

徳本峠に到着! 先人たちがみた絶景は?

天気が良ければここから穂高連峰がとてもきれいに見えるそう。今回は残念ながらこの天気。穂高連峰は3,000mを超える峰々が連なる、日本屈指の岩山。カッコよさに憧れる人は多い。

穂高連峰の絶景は、多くの人を惹きつけてきたことでしょう。

徳本峠小屋。今夜はここのテント場にお世話になります。

勝手にテントを張ってはいけないので、幕営の受付をします。ちなみにこの日の夜は悪天候。強風にテントを揺さぶられ、雨音がポツポツとうるさくてあまり眠れませんでした。

2日目。徒歩で上高地に入る!明神を観光して、槍ヶ岳のふもとまで進んでおく。

名残惜しいが峠をくだり、いよいよ上高地へ。最後は快適な樹林帯歩き。

【2日目行程】
徳本峠→上高地(明神)→槍見河原→ババ平のテント場

徳本峠をあとにして、ひたすら下って上高地を目指します。上高地まで約3km、90分。

最初はつづら折りの下り道ですが、次第に緩やかに。歩きやすい道が続きます。

雨上がりでキノコがたくさん!食べられるキノコを判別できるようになりたい。

上高地に到着しました!

通ってきた道を撮影。このように木立の中の、緩やかな斜度の道を快適に歩けるコース。雰囲気が里山からアルプスに。見慣れた上高地が広がります!

公共機関で簡単に行ける河童橋。そこから横尾へは3時間かかりますが、この区間はほとんど斜度がなく、登山者でなくても歩けるように整備されています。

その道の途中に、徳本峠からの道は突き当たります。車道が開通してもなお廃れることがないのは、徳本峠の道には歴史や雰囲気、景色などの良さ詰まっているからではないでしょうか。わざわざ大変な思いをしてでも通りたい道だと感じました。

上高地に到達!穂高神社の奥宮にお参りして明神池を見学する。

嘉門次小屋。猟師の上條嘉門次とウォルター・ウェストンについて。

続けて槍ヶ岳を目指しますが、その前に寄り道。近くの明神を観光します。ここには嘉門次が1880年に建てた山小屋があり、現在は曾孫さんが管理しています。

明神には安曇野市穂高にある穂高神社の奥宮があります。

梓川にかかる吊り橋。揺れるとなかなかのスリル!渡って左手の方向に少し歩くと、穂高神社の奥宮です。

参拝したあとは明神池の見学。

明神池は穂高神社の神域で、奥宮の奥にあります。晴れていれば青空が映えるところ!

池の底から湧き水のおかげか、池の水はとてもきれい。静かでどこか落ち着く、神秘的な空間です。

槍見河原でひと足さきに槍の穂先を拝む!

観光を終えて槍ヶ岳に向かって登山を再開。

明神から上高地の最奥地、横尾までは約7kmで120分。さらに横尾から今日のテント場のババ平までは、5kmで100分。序盤はなかなか槍ヶ岳が見えてこず、つらいところ。しかし、横尾を過ぎたところに槍見河原という場所が。

ここは、槍の穂先が見えるスポット

遠くに見えるので道のりの長さを実感しますが、モチベーションが上がるポイント。ここからしばらく登り、ババ平のテント場に幕営。早く寝て、翌朝に備えます。

3日目はついに槍ヶ岳に到達!山頂から絶景を望む。

【3日目行程】
ババ平→槍ヶ岳→ババ平→上高地

太陽が昇る前後の時間帯の美しさは格別!

その日のうちに下山したかったので、日が昇る前に起きました。眠い。

当然まだまだ真っ暗。星空が美しかったので撮影して、出発準備に取り掛かります。ババ平から槍ヶ岳まで、約5km。時間は疲れ具合によります!最後は特に急登が続き、また歩きにくい箇所。体力や天候をみて無理をしないのが吉。

手持ちのためブレブレ

夜が明けてきました。梓川の水源地に近くなり、川の音も小さくなってきます。最終水場のお水はとても美味しいので、是非飲んでほしい。槍に近付くにつれて斜度は増し、直登が困難に。時間はかかりますが、つづら折りの道を登っていきます。

標高も高くなり、向かいの常念山脈が低く見えるようになってきました。朝焼けがとても美しい!

次第に周囲が明るくなってきます。夜から朝へ。この瞬間はとても印象的。

槍見河原以来の槍ヶ岳。だいぶ近くなってる!

朝陽を浴びた槍ヶ岳!

坂がキツい分、眺めがみるみる良くなっていきます。空気が澄み渡っています。

槍ヶ岳まで、あと1.25kmの道標。

見えているけどなかなか着かないところ。道が悪いので、気をつけて歩きます。

なんと神々しい姿でしょうか!左の方には槍ヶ岳山荘が見えています。

朝日だ!登ってきた谷か照らされようとしています。この景色は大好きだな。

段々と朝日の当たる部分が下りてきて、一面オレンジ色に。槍の肩に向けて、最後のつづら折りを登ります。空気も薄く、少し疲れます。

槍の肩に着く前に、筆者が紅葉時期に撮影した猛烈に美しい槍沢の写真を紹介。

徳本峠ルートを通った時ではありませんが、紅葉がとても美しかったときの写真を勝手に紹介。

木々が黄色く色付き、雲と相まってしっとりした美しさ。

紅葉の木々の中を行く道。ジブリのワンシーンのような風景に疲れも忘れてしまいそう。

赤い石がゴロゴロした沢を横切ります。間違えて沢を登らないようにしましょう。

槍沢上部の全景!

石の白、紅葉の様々な色、ハイマツの緑、なんとも賑やか。

”錦の紅葉”も鮮やか。

ナナカマドでしょうか。強烈な赤がとてもいい。

今度は下から見た景色。岩の白、青空、紅葉。素晴らしい。

秋だというのにまだ雪が残っています。

何枚でも撮影してしまいます。これでも掲載する写真はかなり絞りました。

最後に槍の肩から撮影した、槍沢のモルゲンロート。

左下に小さく見えているのは殺生ヒュッテ。遠方には右から、南アルプス、富士山、雲海を挟んで八ヶ岳がくっきり見えています。

槍による影絵も撮影することができました。

いやはや、本当に美しい。山の景色は一期一会。次はどんな素晴らしい風景が迎えてくれるのか。

槍ヶ岳山頂からの景色

槍の肩に着き、まずは穂先を目指します。

ついに山頂に到着!写真は別の山行のときのもの。

たまに、ほこらの後ろからニュッと人が登ってきます。これは北鎌尾根というバリエーションルートを登ってきた猛者。いつか挑戦したいなあ。

北方向。手前の北鎌尾根、左の赤い硫黄尾根。その奥には水晶岳、野口五郎岳。右手には、燕岳の稜線と、そのさらに奥には後立山連峰の山並みが見えます。

こちらは西方向。

この槍のたもとから伸びる西鎌尾根。さらに黒部五郎岳、薬師岳、鷲羽岳、水晶岳と、日本最後の秘境といわれる雲ノ平を囲む山々が丸見え!

美男美女揃いに興奮します。

こちらは手前から、大喰岳、中岳、南岳。

そして大キレットを越えて、北穂高岳。奥のもっこりは奥穂高岳。左のギザギザは前穂高岳。雄大な穂高連峰が堂々と聳えています。雲がいい感じ。

穂先からおりてきて、槍ヶ岳山荘に。穂先まで30分のところにある山小屋で、シーズンは大混雑します。

別の山行ですが、印象的な夕陽を紹介。まるで流れ星です。

雲海の上、標高3,000mの地点の上にも雲が。このおかげで上下両方の雲がオレンジ色に染まりました。

カッコイイ!

真ん中の下に登山道が映っているのが確認できます。この急斜面を登ってくるわけですね。そりゃたいへんなわけだ。

岩の凹凸が荒々しい、ここも登山ルートになっています。

槍にお別れをいい、下山。途中の槍沢ロッヂで穂先を見る

いつまでもいたいところですが、下山。途中振り返り、大好きな構図で撮影。

これは8月に撮影。

これは別の年の10月。まったく違いますね。山頂から滋賀県の伊吹山が見えるくらい空気が澄んでいました。

下山しているときの、高度を下げて行く感じ。寂しいです。気温や湿度もどんどん高くなっていきます。

もう谷の中まで下りてきました。

標高はもう高くはありませんが、晴れ日の山行。下ってきた安心感と歩きやすい道は、気持ちが良い。

途中ババ平でテントを回収しました。

槍沢ロッヂに到着。ここでは槍の穂先が見えていると望遠鏡を置いておいてくれます。望遠レンズで撮影するとこんな感じ。

上高地に下山してきた。観光名所の河童橋を1枚パシャリ。

完全に下りてきました。

横尾からは10km歩いて河童橋へ。3日間で歩いた距離が単純計算で50km以上。帰りはさすがに徳本峠は越えず、公共交通機関で帰りました。

おなじみの河童橋。観光客で混雑。

あえて時間をかけて上高地に入り、槍ヶ岳を目指す山歩き。アルプス感がない環境から丁寧に北アルプスを攻める感覚は、味わい深いものがあります。新緑や紅葉は見ものでしょう。峠に立ったときの穂高連峰のパノラマも、今回は見られずじまい。徳本峠を越える道は、何度でも歩きたいと思わせる道でした。

皆さんも機会があれば、ぜひ徳本峠を訪れてくださいね。

▼上高地のスキマ記事

▼登山のスキマ記事はこちら

公式LINEの友達募集広告

この記事を書いた人

おーむら

山と温泉と、なにより信州が大好きな神奈川県出身・在住のフォトグラファー。
週末のほとんどを信州に費やす信州オタク。趣味は登山、スキー、日本酒。信州の奥深さをみんなと共に感じたいと願っている。