江戸末期に生まれ、明治初期に活躍した浮世絵師「月岡芳年(つきおかよしとし)」。
月岡芳年は53年間の生涯で約1万点もの作品を描いたといわれていますが、その中に「平維茂」や「鬼女紅葉」を題材にした作品がいくつかあります。
「鬼女紅葉伝説」は信濃国戸隠(現長野県長野市)や別所温泉(上田市)が舞台となっているので、Skima信州でも度々記事にしています。
今回はそんな「紅葉伝説」をテーマにした月岡芳年の作品をいくつかご紹介します!
月岡芳年とは?明治初期に活躍した浮世絵師
月岡芳年は明治初期に活躍した浮世絵師です。詳細は不明ですが、1839(天保10)年に吉岡平部という武士の次男として、江戸新橋(現中央区銀座8丁目付近)に生まれたとされています。
江戸生まれ東京育ちの芳年は1850(嘉永3)年、12歳で歌川国芳に入門し、15歳で画家デビューを果たします。晩年はいわゆる「血みどろ」と呼ばれるような無惨絵が目を惹きますが、「武者絵」や「歴史画」のシリーズをはじめ、「美人画」や「報道画」など幅広く活躍していました。
53歳のときに精神の病が悪化して亡くなる前には『東京流行細見記』の浮世絵師人気番付で首位を獲得しており、明治を代表する浮世絵師のひとりであったことがうかがえます。


月岡芳年の描いた「鬼女紅葉」

今回紹介する作品は「紅葉伝説」と呼ばれる平安時代のストーリーが題材。信濃国(現長野県)の戸隠に流刑された紅葉が鬼女となり、後に平維茂に討伐される物語です。
紅葉伝説の詳細ついてはSkima信州でマンガにしていたり、
実際に伝説の舞台になった場所を訪れたりしているので、
ぜひあわせてご覧いただければと思います。

上の絵は1890(明治23)年に出版された『新形三十六怪撰』シリーズの「平惟茂戸隠山に悪鬼を退治す図」。
「戸隠にいる鬼退治」を命じられて都からやってきた平維茂。美しい女性から宴に誘われて酔い心地ですが、よく見ると酒器に鬼の顔が映っています。酔って油断したところを襲おうとする鬼女に気付き、刀を握る瞬間が描かれています。

さらにこちらは1887(明治20)年に描かれた『平維茂戸隠山鬼女退治之図』。
色鮮やかな衣を身に纏った2人の様子は戦いの直前にも関わらず非常に穏やかに見えます。妖艶な微笑みを浮かべる紅葉の美しい顔の反面、水面には目を吊り上がらせた恐ろしい鬼の表情が見て取れます。鬼の正体に気付いた平維茂は慌てることなく、冷静な表情で臨戦体制に入っています。
戦いの前の一瞬の静けさを表した1枚です。
月岡芳年の描く「鬼女紅葉」まとめ

月岡芳年の描く鬼女紅葉をご紹介しました。
おそらく題材は「平維茂」がメインだと思うのですが、個人的に鬼女紅葉さんが好きなのでタイトルでちょっと贔屓しています。
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