白馬鑓温泉小屋|北アルプス白馬岳登山と雲上の露天風呂をめざして

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歩いてしか行けない山小屋の温泉が大好きです。正真正銘の秘湯だからというのもありますが、苦労してたどり着く達成感がまた堪りません。登山と温泉の相性は抜群に良いと思います。

そんな山小屋温泉ですが、北アルプスにはどっさりとあります。河原にお湯が湧いていることで知られる大町市高瀬川奥地の「湯俣温泉」。この上ない絶景露天風呂が楽しめる糸魚川の「蓮華温泉」。黒部源流近くにある日本一遠い温泉と言われる「高天原温泉」。温泉好きかつ山好きの僕にとって、名前を聞くだけでウズウズしてしまう凄い顔ぶれです。

白馬鑓(はくばやり)温泉」もそのひとつ。北アルプスの山小屋温泉で一番有名と言っても過言ではない?そのくらい憧れる人も多い山小屋温泉です。白馬村にそびえる白馬鑓ヶ岳(標高2903m)の中腹、標高2100mの場所にある温泉。麓からたどり着くまで最短でも歩いて4時間かかると言われます。

白馬鑓温泉の魅力は何と言っても、その雲上の地から楽しめる絶景の露天風呂でしょう。今回は、日本百名山にも選ばれている北アルプスの名峰「白馬岳(しろうまだけ)」とセットで白馬鑓温泉を楽しむ、一泊二日の登山レポです。苦労して歩いた分、最高のお湯に出会うことができました。

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白馬鑓温泉小屋へのルート

国土地理院地形図より作成

【1日目】猿倉から大雪渓を登って白馬岳山頂へ

早朝、白馬岳の登山口「猿倉」に到着です。訪れたのが8月のお盆シーズン。夏山が楽しめる季節とだけあって、たくさんの登山者でにぎわっていました。

今回は、ここ猿倉から白馬大雪渓を登って白馬岳を目指す、白馬岳屈指の人気コースで挑戦しました。体力のみならず、雪渓を歩く技術も必要とされる難易度の高いルートです。猿倉では安全のため、登山届の提出をお忘れなく。

準備を整えて、さあ出発です!

憧れの白馬大雪渓を歩く

猿倉を出てしばらくは未舗装の林道を歩きます。アップダウンも無くて、軽いお散歩気分です。朝はまだ天気が良く、山頂の方までくっきりと美しい山が望めました。

歩くことおよそ1時間で白馬尻小屋に到着です。岩に書かれた「おっかれさん!」の文字に心が和みます。

登山はここからが本番。この先しばらく行くと大雪渓が現れます。トイレ休憩などはここで済ませておきましょう。初めての大雪渓に興奮と不安が入り混じる・・・

さあ、大雪渓の登場です。ここでアイゼンを靴に装着します。大雪渓を登るにはアイゼンは必須です。白馬駅前の北アルプス総合案内所でもレンタル(1000円)が可能なので、必ず持っていくようにしましょう。

雪渓の上での歩行は焦らず慎重に。踏み跡や赤い線の目印をもとに、ルートから外れないように注意することが大切です。写真のような雪渓の割れ目(クレバス)もあるので、落ちないために近づかないこと。

岩場に出たタイミングで休憩。振り返るとこの絶景です。よくここまで登ってきたなあ。写真で見るよりも傾斜があって驚きます。

この後もどんどん高度を上げていきます。雪渓の上はまさに天然の冷蔵庫。ひんやりとした爽快な風が吹き付けます。下界は猛暑なのに、こちらは完全に天国のようです。疲れも吹き飛びます。

いよいよ大雪渓も終わり。雪渓の上の歩行は想像以上に緊張感があったので、とりあえずはここで一息つくことができました。左側にそびえる杓子岳の岩峰が美しいです。

あらためて、よくここまで登ってきたなあ…といった感じ。365日、真夏でも消えることのない雪。この大雪渓が多くの登山者を魅了してきた理由、十分に分かったような気がします。

高山植物のお花畑を抜けて名峰「白馬岳」の頂へ

大雪渓が終わったら次はお花畑の始まりです。ここは「葱平(ねふかっぴら)」と呼ばれている場所。可憐な高山植物の大群落の中を歩きます。みずみずしい花たちが登山者を迎えてくれます。

高山植物を楽しみつつも、最後の急登をひたすら登ります。ここが体力的に一番辛いところ。最後の力を振り絞って登り切りましょう。村営頂上宿舎の建物が見えてきたら、もうあと少し。北アルプスの主稜線に到着です。

主稜線まで来ると雲に覆われてしまいました。天気が良いと絶景が広がるだけに残念。ここから白馬岳山頂までは約30分のなだらかな登りです。

白馬岳(標高2932m)に登頂です!

眺望は見ての通り、雲に覆われて全く見えませんでした。天気が良ければ同じ白馬三山の杓子岳と白馬鑓ヶ岳、剱岳や立山、さらには槍・穂高連峰までの大パノラマです。いつかリベンジしたい!

白馬岳山頂へは栂池から登るコースも人気です。高低差も少なく大雪渓コースに比べて危険なところも少ないので、白馬岳登山入門コースと言えるでしょう。

富山県側はなだらかな斜面ですが、長野県側は険しく切れ落ちています。景色は楽しめなかったですが、昔から憧れていた名峰に無事登頂できてよかったです。

夏山シーズンのテント場は大盛況

この日は村営頂上宿舎の裏手にあるテント場でテント泊します。さすが夏山シーズン。テント場は色鮮やかなテントで埋め尽くされました。山岳部の学生さん達も多くて大変な賑わいです。

Myテントを設営。早めに到着したので静かな隅っこに張ることができました。暖かい山小屋に泊まる方が疲れも取れるし良いですが、大自然の中で一人になれるテント泊もまた良いものです。

明日の行程はとても長いので、夜8時ころには就寝です。山の夜は早い・・・

【2日目】白馬三山縦走から雲上の秘湯「白馬鑓温泉」へ

山は朝も早いです。まだ日が昇らない早朝4時には起床。外は風が強く荒れ模様です。今日も景色は期待できなそう・・・

この後は、白馬岳と共に「白馬三山」と呼ばれる杓子岳と白馬鑓ヶ岳を縦走。景色が楽しめる縦走はアルプス登山の醍醐味です。白馬鑓ヶ岳からは白馬鑓温泉方面へと下ります。いよいよ待ちに待った温泉です!

展望ゼロの中、急登と鎖場の連続

まずは杓子岳(標高2812m)に登頂。

この山は巻き道もあるので、山頂まで登らずに通過もできます。景色は全く見えませんでしたが、せっかくなので登ってみました。

次に白馬鑓ヶ岳(標高2903m)に登頂。

なかなかのゴツい山でした。山頂直下の岩場の急登は難所です。山頂でしっかりと休憩して体力を回復させます。

さあ、いよいよ白馬鑓温泉に向けて下山開始!

唐松岳方面との分岐を左に進み、主稜線をどんどん下っていきます。途中、”高山植物の女王”と呼ばれるコマクサを発見。荒涼とした砂礫地に咲く孤高の花。可憐ながらも力強さを感じます。

一瞬だけ雲がとれて、先ほどまでいた白馬鑓ヶ岳が姿を見せます。

鑓温泉までもう少し!というところで、このルート最大の難所と思われる「鎖場の連続」が現れます。岩は水分で湿っていてとても滑りやすいです。登山道と沢が一体化していたり、水量の多い滝を渡る場所もあったり。最後まで気が抜けません。

雲の中に入っており、辺り一面完全に真っ白。早く温泉に浸かりたい!ただそれだけでした。

歩き続けると・・・

おや?ほんのりと硫黄の香りが。

標高2100mにある露天風呂で極上の温泉を

とうとう着きました!白馬鑓温泉!

長い時間をかけてたどり着いた分、この時の感動はひとしおでした。辺りは硫黄臭が漂います。普通の山小屋とは明らかに違う雰囲気。そう、ここには温泉がある!

受付で入浴料の500円を払い、さっそく夢にまで見たあの露天風呂へ。

白馬鑓温泉小屋には、お風呂が2つあります。

・混浴露天風呂

・女性専用内湯

の2つです。20~21時の間は露天風呂が女性専用時間になるようです。昼間はちょっと入りづらいかも。ワイルドですが露天風呂の周りは高い簾で囲われており、上から見えることはなさそうです。

ついに雲上の露天風呂とご対面。

あいにくの天気で見晴らしは悪いですが、晴れていればきっと素晴らしい絶景が目の前に広がることでしょう。

掛け湯でしっかりと身体を洗い流してからお湯に浸かります。もちろん、シャワーや石鹸といったものは無し。ここまで来るともはや余計なものに感じます。

湯船はシンプルな造りですが、広くて何より開放感が堪りません。奥の石垣の下の方から大量にお湯が注がれています。ジェットバスのような勢いで驚きました。さらに湯口は複数あります。

お湯は最高の極上湯です。トロトロ感のあるなめらかな硫黄泉。硫黄臭も強く濃厚なわりに、疲れた身体に優しい感じもしました。温度はちょうど良く適温。大きな白い湯の花が大量に舞っています。

透明なお湯ですが、若干青く色付いているようにも見えます。これほどまでに完璧だと感じた温泉も珍しい!

山小屋で浸かる温泉というのも堪りません。白馬鑓温泉小屋の標高は2100m。もちろん通年で営業できるわけはなく、夏季の約2ヶ月間限定での営業となっています。雪崩多発地帯ということもあり、毎シーズン小屋の建て壊しをしなくてはならないそうです。それでもお湯は365日絶えず湧き続けているのでしょう。

あまりにも快適すぎてずっと入っていられます。小屋で話した方の中には、「今日はもうここに泊まっていく」とおっしゃる方も多くて羨ましくなりました。朝は御来光、夜は星空。ここで過ごす一日は唯一無二の体験になるだろうなあ。

今回はここには泊まらず、今日中に麓の猿倉まで下山してしまう日程。たっぷり一時間ほど湯浴みを楽しんで、名残り惜しくも白馬鑓温泉を後にしました。

山小屋の下にはテント場があって、自由に浸かれる足湯もありました。ちなみにここのテント場、露天風呂のすぐ真下にあるのです。露天風呂からならテント場がよく見渡せますよ。やっぱりこの開放感が堪らない!

テント場から見た白馬鑓温泉小屋の全景。こうして見るとあらためて「秘湯だなあ」と感じます。お湯が湯けむりを上げて谷底へ流れていく…。

さようなら、白馬鑓温泉。また来ます。

白馬鑓温泉 白馬鑓温泉小屋(はくばやりおんせんごや)
泉質:含硫黄-マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩泉(硫化水素型)
泉温:43.1℃
加水:なし
加温:なし
還流:掛け流し
所在地:北安曇郡白馬村北城字白馬山国有林
料金:大人500円/小人300円
営業時間:要問い合わせ
定休日:夏季(7月下旬~9月下旬)のみ営業
公式ページ:https://www.hakuba-sanso.co.jp/category/hakubayarionsen/

名残り惜しくも猿倉へ下山

白馬鑓温泉からは約4時間かけて登山口の猿倉へ下ります。この道はとにかく雪渓だらけ。何度も雪渓をトラバースして渡ります。

人っ子一人いない何とも幻想的な世界。雪渓の上は天然のクーラーのようで、もはや寒いくらいです。

ここでも大雪渓と同様、赤い線を目印に歩きます。踏み外すとそのまま下へ滑落しかねない急斜面なので要注意。

こちらは杓子沢の雪渓。ここは傾斜が急で距離も長いので一番怖かったです。

杓子沢を離れたところから見るとこんな感じ。下の雪渓を歩く人が豆粒のように小さく見えます。杓子岳の雪渓が源流の雪解け水が、爆音を立てて滝のように流れ落ちています。山岳地形のスケールの大きさに圧巻!

「小日向のコル」から猿倉方面を眺めた景色。ここまで来れば後は下るのみです。猿倉に近づくにつれて次第に大きくなる沢の音。気温もだんだんと高くなっていきます。

無事、猿倉まで戻ってきました!今回の登山もこれにて終了です。

歩いてしか行けない山小屋の秘湯「白馬鑓温泉」。今回は白馬岳から白馬三山を縦走後、下山途中に寄るという、より難易度の高いルートを歩いて行ってみました。その苦労の全てが吹き飛ぶくらいの感動がそこにはありました。これぞまさに秘湯。このお湯さえあれば、もう何もいらない・・・そう感じさせてくれる極上の温泉です。

白馬鑓温泉への道のりは、登山経験者でもけっして楽なものではありません。最短ルートを通って早くても4時間はかかります。目指される方は十分に計画を練ってから訪れることを願います。

書いていたら今年も行きたくなってきました。

下山後は白馬八方温泉がオススメ!

【連載】教えたいけど知られたくない!信州のスキマ温泉めぐり

長野県の温泉地数は224ヶ所、245ヶ所の北海道に次いで日本第2位!ちなみに温泉利用の公衆浴場数は、654ヶ所と日本一を誇っています。信州の温泉地といえば野沢温泉や渋温泉、別所温泉や白骨温泉などが有名ですね。

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この記事を書いた人

力路郎

北信濃出身・大阪在住の大学生です。趣味は温泉めぐり。暇さえあれば全国の極上湯を求めて一人旅しています。現在300湯に入湯。山奥の湯治宿や鄙びた共同浴場に憧れます。